着信音 - 中山市朗
これは私の友人が体験した話なんですけど、もう十年くらい前の話になります。 彼は本当に古い木造のアパートに住んでいたんです。 それもそこに長いこと住んでいました。 建物は本当に昭和四十年代に立てたような、そんなアパートだったんです。 ある日の夜中。 プルルルル、プルルルルと、携帯電話が鳴った。 でも自分の携帯電話の着信ではなく、どうやら隣の部屋の人の電話が鳴っているようなんです。 プルルルル、プルルルル 着信音が鳴っているんですが、なかなか隣の人は出ないんです。 なんだよ、うるせーなと思っていたんですけど、そのうち電話は止まったんです。 次の日の夜も、プルルルル、プルルルルとまた電話が鳴っているんです。 また隣の住民の携帯電話なんです。 今回もまた長いこと電話が鳴っているんです。 (うるせーな、もう寝られねーじゃねーか) そして三日目も電話が鳴った。 今まで彼は長いことここに住んでいたんですが、そんなことは無かったんですね。 でも三日連続で夜中に電話が鳴って、三回とも隣の人が出ない。 (おかしいな、なんなんだよ 三日連続ともなると、腹が立ってくるな) 文句を言おうと思ったんですけど、隣の人がいないから電話に出ないわけですよね。 どうしたものかなと思っていると、急にドンドンドンドンと自分の部屋の玄関が、けたたましくノックされたんです。 誰だろと思ってドアを開けてみると、そこにいるのは隣の住民なんです。 そして開口一番 「携帯電話うるさいんだよ」 すごい怒っているんですね。 「いや、うるさいのはおたくのほうじゃないですか」と言おうと思ったんですけど、 あまりの剣幕であっちが言ってくるもんだから何も言い出せずにいたんですね。 「おい電話でろよ、今も鳴ってんじゃねーかよ」 プルルルル、プルルルル 「いや、おたくの電話がなっているんでしょ? ほら、壁の向こうから音が聴こえるじゃないですか」 「いや違うよ、だって俺も壁越しに聴こえるんだもん。 お前の部屋だろ」 おかしいですよね、お互いが壁越しに電話の音が鳴っていると言うんですから。 そして二人で音のする壁の方に耳を澄ましてみると、確かに壁の向こうから聴こえているんですが、少し音がくぐもっているんです。 これは一体何なんだろうと思って、古いアパートですから金槌を持ってきて、そこを叩いてみると、壁と壁との間に鴨居のようなものがあって、そこの上に携帯電話が置いてあったそうです。 その壁の鴨居の上にあった携帯電話が鳴っているんです。 これは一体、いつ、誰が置いていったものなのか。 昭和四十年代に建った家ですよ。 鳴っている携帯電話を不審に思いながら、携帯電話に出ようとしたら、その音がピタッと止まった。 それを取ってみると、電池が入っていないんです。 彼はもう十何年そこに住んでいたんで携帯電話が無いころから住んでいます。 本当に誰がそこに携帯電話を埋めたのか分からないんです。 そして携帯電話が何故鳴っていたのかも分からないんです。






