となりの世界 - 佐伯日菜子
私がいわゆる霊体験というのを初めてしたのは小学校五年生の時だったんです。 当時私は千葉県の田舎町に住んでいて、自宅から駅まで徒歩三十分、自転車で十五分というところに住んでいたんです。 当時私はバレエを習っていて、バレエの教室に行こうと自転車で駅まで向かおうと一生懸命漕いでいたんです。 そうしたら急に後ろがストンと重くなったんで、横にあるクリーニング屋さんのショーウィンドウを見たんです。 パッと見ると、私の自転車の後ろに白い服を着た女の子がうつむいて座っていたんです。 怖くなって急いで自転車を停めて後ろを振り返ったら、そこには誰もいなかったんです。 という体験をしたのが私の初めての霊体験です。 --- らせんという映画で私は山村貞子役を演じたんですけども、その山村貞子役に決まったのはもう撮影も始まってた頃でした。 私が一番最後にキャスティングが決まったんです。 なので他の皆さんはお祓いをしていたんですけども、私はお祓いをすることも出来ず、結局そのまま現場に行くことになったんです。 一番初めに映画の中で撮ったシーンが、「これが山村貞子です」と、見せる写真を撮ったんです。 全部の写真を撮り終わってポラロイドを取ってみると、自分の顔のところにモヤがかかっている状態になっていたんです。 でもポラロイドというのはもともと時間によってちゃんと色が出なかったり、 剥がすタイミングが早かっただけで変なものが写り込んでしまったように見えるものなので 「あー、そういうふうになってしまったんだな」程度に思っていたんです。 それからしばらくして共演者やスタッフの方とお昼ごはんを食べている時に監督が 「おい日菜子、これすごいぞ」 とアルバムを持ってきたんです。 そのアルバムの中にあった写真というのは映画の中で先ほどお話したように、山村貞子ですと見せる写真なんですけども 十五枚ほどあった写真のうちの、四分の三ほどは顔に白いもやがかかっている状態で、胸から上の写真なんですが、本当に顔の部分だけもやがかかっていて 全く私だって分からないような写真ばかりなんですね。 私だとかろうじて分かるものだとしても、とにかく顔のあたりが白いもやに包まれているような感じなんです。 そんな写真ですからほとんど使い物にならないんですよね。 でも撮影では日数が限られていますから、とりあえず全然使えなかった写真だけ削除して、使える残りの分だけをらせんの映画の中で使ったんです。 --- お休みの日に都内の町中を歩くのが好きな私なんですが、ある日原宿の街を歩いていた時に、 歩道橋があるんですけども、買い物し終わってその辺りを歩いていた時に、前に一組のカップルがいたんです。 (あー、カップルいいなぁ)なんて思いながら歩いていたら、そのカップルの女の子のほうがすごく可愛らしいスカートをはいていたんで (あのスカート可愛いなぁ、何処で買ったのかな)なんて思いながら私は見ていました。 ぼーっとしている時って一点を注視して見てしまうことってあるじゃないですか、何気なくなんですけど。 そうやってぼーっとしていたら、そのカップルの男の子のほうが私の方を急に振り返って「えっ」というような、驚いた顔をしたんです。 私もあれって思ったんですが、これでも少しは映画やドラマに出してもらっていますから、あ、もしかして私のことを知っていてくれる人なのかなと思っていたんですね。 そしたらその男の子がそういった知っている人を見たぞって顔じゃなくて、明らかに不審そうに私を見ているんです。 女の子の方は相変わらず私に背を向けて傘を指していたんですけども、きっと彼のそんな姿にただならぬものを感じたんでしょうね。 女の子の方も私の方を振り返ったんです。 そしたらなんとその女の子の顔が、私と全く同じだったんです。 私もそりゃ驚きますよね、自分と同じ顔なんですから。 あまりにも似すぎていると、怖くなってくるもので、声もかけられないというか。 中途半端に似ているくらいだったら、なんだか私達似ていますねって言えるんでしょうけど、本当にまるで鏡を見ているような状態なんです。 彼女も全く同じように恐怖の表情をしていて、私も思わず逃げるようにして家に帰ってしまったんです・・・。 とても怖いんですけど、世の中には似ている人が三人いると言いますから、その一人に私は遭遇してしまったのかもしれないですね。 その女の子がはいていたスカート、とても可愛かったのでもしかしたら私と好みまで似ているのかなと思うと、なんだかゾッとしてしまいますよね。






