予知夢

予知夢というのかなぁ、そういうのってありますよね。
これから起こることを夢で見てしまうとか、何か予感があったりだとか。
夢なのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。
ですから、これから起こる話をあなたが判断してみてください。

仮に綾子さんとしておきましょうかね。
彼女が小学校5年生の時の話なんですけどね、夜に2階の自室で寝ていた。
すると夜中に何かの気配で目が覚めた。
と、部屋の襖が開く音がする。
見ていると、幼い妹が入ってきた。

「美香ちゃんどうしたの?」と声をかけると、妹は何も言わないまま自分の布団に潜り込んできてそのまま寝ちゃった。
だから自分もそのまま寝ちゃった。

朝になって目が覚めると妹の姿がないので、お母さんのところに帰ったんだなと思い、
後で妹に聞いてみると、「んーん、わたしお姉ちゃんのところに行ってないよ」と言う。
お母さんに聞いてみると、「美香ちゃんはわたしとずっと一緒でしたよ」と言う。

そんなはずはない。妹は自分の布団に入って一緒に寝ていたんだから。
でも夢だったのかなと思い、結局その日はそのまま日が過ぎていった。

ある晩また夜中に目が覚めた。
なんだか寝苦しいんでふっと気が付くと隣で誰かが寝ていた。
見てみると妹だった。
すやすや眠っている。

いつ来たのか、いつから眠っているのか分からないけども、隣で寝ている。
だから自分もそのまま寝ちゃった。

翌朝目が覚めると、また妹の姿がない。
あ、お母さんのところに帰ったんだなと思い
後で妹に聞いてみると「んーん、お姉ちゃんのところには行ってないよ」と言う。
お母さんに聞いてみると「美香ちゃんはわたしとずっと一緒でしたよ」と言う。

おかしい、そんはなずはない。
どうやら自分では気が付かなくても時々妹の美香ちゃんは自分の布団に入ってきて眠っているらしい。

そしてまたある晩
夜中に目が覚めた。
なんだか眠れない。
眠れないまま天井を見ていた。
また襖が開いた。
そして妹が入ってきた。
黙っていると、「お姉ちゃん、起きてる?」と聞く。
「うん」と答える。
すると妹が布団に入ってきて、眠っちゃった。

しばらくしてこの綾子さんが布団から出てトイレに行った。
自分の部屋は二階なんで、階段を降りてお母さんの部屋に行ってみた。
お母さんは一人で寝ているその確たる証拠をつかもうと思ったんでしょうね、
お母さんの部屋に行き、襖を開けてみた。

小さな灯りがついており、部屋は薄暗かった。
見てみると布団の中にはお母さんと共に、妹がきちんと寝ていた。

え、そんなはずはない・・・。
妹は自分の部屋の布団の中で寝ている・・・。
なんで・・・おかしい・・・。

変だなと思った時に、自分の背後に視線を感じた。
なんだろうと思って振り向くと、暗い闇の中にもう一人の妹が自分を見つめていた。

このことは誰にも言わなかった。
お母さんはもちろん妹に言うと妹が可哀想だと思って黙っていた。

そしてまた日が過ぎていった。
そのうちに、あれはきっと夢だったんだな、何か勘違いしていたんだなと思うようになっていったんですね。

綾子さんは高校生になった時、実は妹は双子だったということを知った。
お母さんに聞いてみると、話したくなさそうだったんですが、妹は双子だった。
生まれてすぐに一方は亡くなってしまった。
家族には言えなかったという話を聞いた。

そうだったのかと思い、それからまた年月が経っていった。
綾子さんは社会人になった。
妹の美香さんは高校生になった。

その日は休日だったんで綾子さんは自分の部屋で横になっていた。
寝るともなく、起きるともなく、ゴロンとしていた。
すると、襖が開いて妹が入ってきた。

「ねえ、お姉ちゃん知っていたでしょう?私達二人居るの。
 双子ってさ、普通は一人が一つずつ命を持ってるから二つあるわけじゃない?
 でも私達ってさ、命が一つしか無いから長生きしないんだよね・・・」
と言うと、出て行ってしまった。

綾子さんは我に返った。
そうか・・・妹は知っていたのか・・・。

とその時に小学校五年生のあの時のことを思い出した。
あぁそう言えばと思った時、おかしいと思った。
妹は今、研修旅行で海外に行っている。
あの子何故家に居るんだろう・・・?
その瞬間、妙な不安が襲ってきた。

心臓がドクンと跳ねる。

なんで、どうして・・・と思った瞬間、一階で電話が鳴った。

トゥルルルルルル・・・トゥルルルルルル・・・

一階で電話が鳴っている。

「はい、内田ですけども」というお母さんの声が聞こえた。

心臓がドクンドクンと脈を打っている。
なんだか怖い。不安だ。

「はい・・・はい・・・・・・・・はい?」
お母さんの声が聴こえる。

言いようのない不安が襲ってくる。
黙って一階から聴こえるお母さんの声を聞いてる。

「綾ちゃん・・・!!美香ちゃんが、美香ちゃんが死んじゃった・・・」

と、お母さんの声がした。
バスの事故だった。

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