三次のもののけ
広島県の三次という場所で、怪談話の講演を頼まれたんですよ。 三次というのは、古くからもののけ伝説のある土地柄なんですがね。 私、その依頼を受けて舞台に立ちました。 おかげ様でお客さんは満杯でしたよ。 舞台が始まっていい具合に話が進んで、予定通りのいい時間で話しの最後になったんです。 そしたら後ろから女の人の声がしましてね.. と言っても私自身も話しをしてますからね。 女の人の言っている事がハッキリと聞き取れない。 でもどうやら「話を延長してくれないか?」というような事を言っているようなんです。 それで、私予定よりも余分に話をしたんですよね。 話し終えて舞台袖に戻ったらマネージャーが話しかけてきてね。 マネージャー: 「稲川さんどうしたんですか?予定の時間通りに話しは終わったのに、余分に話をしましたよね? 15分オーバーしていますよ?」 稲川さん: 「いや、司会の女性だと思うんだけどさ、話していたら私の後ろに来てね、話を余分にやってくれって言ったんだよ。」 マネージャー: 「え?本番中には誰も舞台にはいってませんよ?司会の女性はそこに居ますよ..」 稲川さん: 「えー..でも俺確かに聞いたんだけどなぁ..」 まあ不思議な話しですけど、言い合ってても仕方ないですからね。 その後は宴会の予定があったんですけど、 宴会まで少し時間があったんで、マネージャーと二人で一度ホテルに戻ったんです。 マネージャーと私の部屋は六階。 エレベーターのボタンを押して、六階で降りる。 荷物を持って自分たちの部屋の前まで行って、 マネージャーが部屋を開けようと鍵をさしたんですけど、開かないんですよね。 「開かないなあ..?」と思って部屋の番号を見たら、なんの事はないそれ三階なんですよ。 仕方なしに二人でまたエレベーターの所まで戻ったら、エレベーターの扉が開いたまま待っているんです。 覗いたらちゃんと六階に明かりが付いているんですよね。 三階なんて誰も押していない、だって、私とマネージャーの二人しかいないんだから。 一体なんなんだろう..と思いながら通路をヒョイッっと見ると、隅に女性が立っているんですよね。 (あれ?どっから来たんだろうあの人?)って思ったんですが... そんな不思議な事があったんですが、しばらくすると迎えがあって宴会場に行ったんです。 宴会が始まって結構盛り上がったんですが、宴会の途中でバンバンバンバン電話が鳴るんですね。 それで電話に出るんですが、 「はいはい、えっ?はいはい、えっ?」って電話に出たみんなが同じ反応するんですよね。 で話しを聞いてみると、 「稲川さん、役場の電話ががんがん鳴っているんです..それで、問い合わせの内容がみんな一緒で、 さっきの本番の終わり頃だって言うんですけど、稲川さんの隣に女の人が立っていたって言うんですよね.. 中にはその女の人が上にすっと消えていったって言う人も居るんです。そんなことってあるんですかね...」 って.... そしたら、その場に居た人の一人が、「いや.....実は俺も見たんだ」よって言うんですよ。 不思議ですよね。 それってもののけの土地だからなんでしょうかね... それで私、ホテルに帰りましたよ。 夜ね、ホテルに戻って寝ていたら、周りがなんだかうるさいんですよ。 私よくテレビをつけっぱなしで寝ちゃうことがあるんですが、 テレビを見てもなんにもついてやしないんですよ。 翌朝になってマネージャーが迎えに来たんで、 「いやダメだなこの部屋、立派にできてるけど壁が薄いぞ! 女の人がやたらめったら騒いでうるさくてしょうがなかったよ」 って言ったんです。 マネージャーと二人でそんな話しをしていたんですが、 でもよく考えたら私の泊まっていた部屋って、一番端の部屋なんですよね.. 騒がしかった向こうに部屋はないんですよ。 不思議なことってあるんですねぇ。





