神奈川県の建売住宅
よく家について、方角がどうだとか造りがどうだとか言うじゃないですか? でもそういうのって確かにあると思うんですよね。 別に風水がどうこうって言う訳じゃないんですけど、 何軒か並んでいる家があると、一軒の家だけやたらと事件が起きたりだとか、不幸が起こったりだとかありますよね。 マンションでもそうですよね?この階のこの部屋だけが何かがやたらとるとかね。 どうもそういうことを呼ぶらしいんだな。 そういうものを呼びやすい家だとか部屋だとかってあるようですね。 神奈川県の中心部からは離れているんですが、築三年の中古の建売住宅があった。 そしてそこに一家が引っ越してきた。 二階建ての建物で、親子三人が暮らすには十分な広さがある。 それでその辺りは、似たような建売住宅が数件あるだけ。 区画はきちんとしてあるんですが、空き地のまま放って置かれた場所が目立つ、やたらと静かな場所なんですね。 でも部屋は綺麗にリフォームされていますし、広いですしね。手頃な値段だし。気に入ったわけだ。 でも不動産屋さんとの手続きの時に、あることを知ったんだな。 というのは中古ですから、自分達がこの家を買う前に、前の持ち主がいるわけだ。 ところがその前にも一番初めの持ち主がいたって言うんです。 たかだか三年のうちに、この家は三回も持ち主が変わっているんです。 不思議には思ったけれど、念願のマイホームですからね。 ご機嫌で生活が始まったわけだ。 引っ越してきて奥さんが部屋の整理をしていると、三歳になるお嬢ちゃんがやってきて、お母さんの服の裾を引っ張る。 「どうしたの?」って聞くと、「部屋に女の子がいる」っていう。 引っ越してきたばかりですから、近所に知り合いなんかいるわけがない。 でも「女の子がいるから来てくれ」って自分を呼びにきたわけですよ。 あまりにしつこく言うものだから、放っておけないしなあ…と思って行ってみた。 その部屋っていうのはお嬢ちゃんの部屋なんですが、そこを開けてみた。 でももちろん誰もいない。 「誰もいないじゃない」って言うと、「ううん。いたもん」って言う。 「どこにいたの?」って聞くと、「あそこにいた」って言う。 見ると、その辺には確かにおもちゃが散らかっている。 「どうしていたの?」って聞くと、「遊んでた」って言う。 その時にお母さんは思ったんですよね。 まだ小さいですから、夢と現実が一緒になっちゃったのかなって。 ですからお嬢さんに、「そうなの?じゃあきっと帰っちゃったんだね」と言ったんです。 三ヶ月ほど経ったある日。 旦那さんが仕事で家を留守にした。 この日は引っ越してきてから初めての凄まじい雨が降った。 外はザーッと雨が降っている。 そうじゃなくても寂しいところなのに、雨が降っているだけでもなんだか心細くなってきた。 奥さんはしっかりと戸締まりをして、(もうこんな日は早く寝てしまおう)と寝室のベッドにお嬢ちゃんと並んで横になった。 そしていつしか気持ちよく眠り始めた。 どのくらい時間が経ったかかわからないけれど「ママ」という声で目が開いた。 でも、娘は隣でスヤスヤと眠っている。 (あれおかしいなぁ…確かに今、娘が自分のことを呼んだような気がしたんだけれども…) 家の外では相変わらず凄まじい雨が降っている。 (空耳だったのかしら?)と思って、また布団にもぐって横になった。 どれくらいの時間が経ったか分からないけれど、「ママ」という声でふっと目を開けた。 確かに聞こえた。空耳じゃない。 強い雨が降っているこんな夜中に、外に人が、ましてや子供がいるわけはないし、 外で呼びかけたならあんなに大きな声で聞こえるはずが無い。 確かにはっきりと聞こえたんですから。 そんなことを考えていたら、なんだか嫌な気持ちになってきた。 だからそのまましばらく様子をうかがっていた。 そうしていると、遠くの方から微かですが誰かが歩いているような足音がする。 それにドアを開けるような音もする。 「ママー?」 また声が聞こえた。 居る…確かに自分の家の中に女の子がいる。 どうも自分を呼んでいるようなんですね… 気味が悪い…。戸締りをした時はそんなものはいなかったんだから。 いるはずがないんで、ゾっとした。 「ママ」「ママ」 どうやら部屋から部屋を探し歩いているようなんです。 怖くなったのと同時に、自分の娘が心配になって、ぎゅーっと娘を抱きしめた。 ベッドにじっと座ってるんですが、嫌な冷や汗が垂れてくる。 怖い。でもどうすることもできない。 足音は自分達の居る寝室にどんどんと近づいてくる。 ……足音が止まった。 そしてどうやら寝室の前、すぐそこまできたらしい。 すると、ドアのノブがゆっくりと回って…ギィィっとドアが開いていく。 廊下が少しずつ見えてくる… 黙ってただ廊下をじっと見ていると、廊下のはしっこに何かが見えた気がする。 と、「ママ来て…」と聞こえた。 恐怖で固まっていると、暗闇の中から血まみれの小さな手が出てきて、おいでおいでをする。 ドアの隙間から黄色のような腐ったような色をした女の子の顔がにょきっと出てきた。 淀んだ目をしてこちらをじっと見ている。 そして、血まみれの手を前に伸ばして自分の方に歩いてくる。 (助けて下さい助けてください…どうか帰って下さい)どうする事も出来ず必死に心の中で祈ってる。 女の子はとうとうベットにいる自分の前まで来て、血まみれの手を伸ばして「ママ来て…」と言った。 お母さんはそのまま失神してしまったんです… 結局この家はすぐに人へ譲る事にして、一家は引っ越してしまったんです… 事情を聞いてみようと思っても、近所にもそんなに人はいませんし、 みんな他所から来た人ですから事情がわからない。 で、しばらく時間が経ってからわかったんです。 辺りには数件建売があるんですけれど、一番初めにこの家に人が住んだんですよね。 自分たちの前の前のオーナーさん家族が。 そしてある雨の日に、その家のお嬢ちゃんが一人で留守番をしていたんです。 そこに強盗が入ってお嬢ちゃん殺されているんですよね。 本来であればもっと建売を立てるつもりだったんですが、 この事件があったことで全てストップになってしまったんです… そういうことがあったから、この家を手頃な値段で買うことができたんだ。 どうも家には、そういうような話がついていたりするもんですよね…。 今はその家がどうなっているかわからないですけれどもね。 そんな話を聞かせてもらいました。





