変質者
匿名さん 2008/07/31 23:18「怖い話投稿:ホラーテラー」
最近このあたりで変質者が出たそうよ、と母が言った。
学校にいく前に、朝食を食べていたときだった。
どんな変質者なのか母に尋ねると、その変質者は強姦魔の類で、通学路の途中にある公園で何人か女性を襲ったそうだ。
ナイフを突き付け、抵抗するようなら切りかかってくる。逃げれば追って来ないが、叫んだり抵抗したりすれば容赦ないのだという。
「アンタは妙に自信あるから、気をつけなさいね。ナイフで刺されたら怪我じゃ済まないんだからね」
私は柔道部員で、ケンカならそこらの男子よりも強い。それに自分で言うのも悔しいが、ルックスはかなり悪い方だと思う。
大丈夫、私を襲う物好きなんていないから。もしそいつが現れたらぶっ飛ばしてやるよ。
母にそう言うと、お願いだからホントにやめて、ちゃんと逃げるのよ、と言われた。
朝食を食べ終わり、いつもの時間に家を出る。遅刻はしないが、そのかわり公園を横切らないといけない。変質者が出ると言われても、公園を含む団地をぐるりと外周したら遅刻確定なのだ。
毎日通る公園。でも今日は違った。
ヘルメットを被った男がいる。ナイフを持っている。
まさか本当に会うとは思わなかった。
男は私に近付いてくる。私は身構える。逃げるなんてことはしない。私が捕まえてやる。
蹴りがとどく間合いにまで来てみろ。
でもその男は途中で立ち止まって、赤いスプレー缶を取り出して、私に向かって噴射した。
飛距離がすごい。視界が奪われる。催涙スプレーか!?
私は押し倒され、男は馬乗りになり、手に持っていたナイフを私の腹に振り下ろす。
サクッ・・・・
ナイフは根元まで腹部に埋まっているのに血は出ていない。本物のナイフじゃない。押したらヘコむオモチャのマジックナイフだ。
男はヘルメットを外す。
「だ~か~ら~逃げろって言ったじゃないの!!」
ヘルメットの下にあったのは、変質者の男ではなく私の母の顔だった。
「本物だったら死んでるわよ!!」
母は私から離れ、マジックナイフと、催涙スプレーもといゴキジェットを持って家へと帰っていった。