見えたもの

 
1378 :名無しさん:2011/10/14(金) 23:49:56 ID:mviy6q7A0
最近よく見るようになったから、疲れたのかなと思って久々に精神病院へ行った。
まぁ見るっつっても火の玉とかそういったはっきりした類じゃなく、車走らせてるときに
視界の端に「人影が映ったかな?」程度のことが数回あっただけで、車止めて振り返っても
もちろん何も居ない。でも車運転する以上は疲れてたりすると危ないからって理由で
電話で母親に言われたお勧めの病院へ行く事にしたんだ。
意外と近所で、あることがあってからお世話になった警察のすぐ近くの病院だった。
まあそれもそのはずで、警察が管理する精神を病んだ犯罪者とかもそこで統括されてるようなとこだったんだ。
無論一般でも入れるけど。

意外と人が多くて、一般の客も疲れた警官とかも来てたりした。カウンセリングも兼ねてる
らしいから当たり前だろうけど。で、案の定俺も待たされた。次々疲れきった顔の人たちが入っていく
中、俺だけ無駄にイキイキとしてたからすごい違和感だった。
で、俺の番が来る一つ前。俺は自分が呼ばれる番号の部屋の前のベンチに座って待機してた。
久々にこのことを自由に話せるからことのほかわくわくしてた。
見えることが異常だとはっきり言ってもらって自らシャットダウンする事が出来ればいいとか思ってた。
そのベンチは2つのベンチが向かい合った状態で置かれてる代物で、後ろに人がいると必然背中合わせになるんだ。
俺が座ったとこは端っこで、その後ろに座ってたおじさんと背中合わせになった。
誰もそんな事望んでないが、順番はすぐだと思って我慢した。そのおじさんも、陰が出来るほど下を向いてた。
それからすぐ一つ前の人の名前が呼ばれた。それからすぐ、俺の前の人が呼ばれた。年は中学生になったかならないか位の少年で 


頬は痩せこけてて、明らかに異常だって分かる。ドアが閉まってからしばらく、ぼそぼそと
話し声が聞こえたけど、何を言ってるかは分からなかった。
しばらくして、「Aさん(仮名)」と呼ばれて、後ろのおじさんが立ち上がった。PSPに集中しつつ、
内心「GJ!」を連呼し続けてた。そんな時、さっきまでぼそぼそとしか聞こえなかった少年と先生の
会話が聞こえた。
「その人は人間ですか?」
「はい。確かに人間です。でも人間ではないです」
「なぜですか?」
「その人はとても力が強いです。彼には敵いません。」
「どんな人ですか?」
「jdfsじゃlkじぇいあじょ(よく聞き取れなかった)」
「彼とは会話を?」
「しました。でもしていません。僕は会話をできませんでした」
「じゃあその彼は何をしたの?」
「誰かを しにいきました」
ああ、本格的にやばい子だ・・・って思った。実際そういうのってテレビでもあまり
やらないから現実性がなかった。でも実際目の当たりにすると単に「戯言だ」とかでは済ませられない
位のリアル実を帯びてくるものだった。俺はとてもPSPに集中できなくなって、とりあえず考える人みたいなポーズで
目頭を押さえた。そのときに次の質問が聞こえた。
「彼は今どこにいますか?」
それを聞いた瞬間に、ドアが開いた。そこにさっきの少年が立ってて、しっかりと俺を見据えた。
「ここにいるよ」
俺を指差して答えた。その言葉に俺は少し切れそうになった。俺は確かに大柄だし力もあるが、なんで見ず知らずの
少年に指差されて、その「彼」にならんといかんのかと。でもここは精神病院だからそういう子も居るよなと
考え直して冷静になったんだ。
医者があわてて出てきて「すいません・・・」っていうから「別にいいですよ。」っていってやった。
それから医者が少年を連れて部屋に戻るとき、ちらっと医者の手元にあったモンタージュ写真が見えたんだ。
そこには、最近よく見る人影によく似た人物がかかれてた。全体的に色が暗くて、背が高い
顔の表情というか顔自体あるのかよく分からないぼやけた感じ、腕があらぬ方向に曲がってる、
指の長さがバラバラ。俺はゾッとした。確かに特徴を捉えてる。
少年が振り返って
「何でおじさんは居るのに、居ないの?」
っていった。
そのとき、後ろでドアが閉まる音がした。さっきおじさんが入ってった所だった。
でも、出てきた人は違った。俺は驚いて、受付に
「すいません、ここにAさんが入っていきませんでした!?」
って聞いたら受付の人が驚いた感じで
「え・・・ええ、先ほどのあちらの方が・・・」
っていって手で指したのは、さっき出て行った人だった。 

話にまとめると多い・・・続き
「じゃあその前の人の特徴は?服装とかでも何でもいいんで!」
って聞いたら、さっき見たおじさんとはまるで違う服装だった。他に入ろうにもここは俺が行こうとしてた
精神科と脳神経外科の部屋の2つしかない。他の治療は違う階だ。何かの見間違いだろうと思った。確かにおじさんは
脳神経外科に入っていった。でもそんな人は居なかった。なら、俺の後ろに居たのは誰?
とか考えてたら、少年が出てきた。少年はまた俺を見て
「おじさん、なんで笑ってるの?」
って言った。俺はもうなんだか訳が分からなくなって、
「俺は笑ってなんかない。ふざけるなよ」
って若干キレた。そしたら少年は笑って
「違うよ。おじさんだよ。」
って言って俺を指差した。その時、ふっと背中に人の気配を感じた。俺から4、5歩は離れてる
だろうか程度の距離に、確かに人の気配があった。なんか夜道で、足音が聞こえないのに人が居る感じがする
のと同じ感じがした。
動かなかった。一歩も俺のほうへ近づかない。だからこそ怖かった。何もしないことで恐怖が抑えられそうもない
ほどだった。少年は俺をみて笑ってた。でも俺の方を見ては笑っていなかった。眼球は左を向いたまま、俺のほうを
むいて笑ってた。
耐えられなくなって、俺は部屋に駆け込んだ。あまりに必死に駆け込んできた俺を見て先生は動揺してた。
「・・・どうしました?」
「自分の番が来ると思うとつい嬉しくて駆け込んでしまいました」
へへへって笑ったけど、多分大体分かってたんじゃないかな。俺を腫れ物でも扱うような眼で見てきたし。

俺は一回深呼吸して冷静になってから、自分の疲れが最近ピークに達したのではないか、そのせいでなにか変なもの
を見るのではないか?等々を話した。先生は「鬱ではないが、前頭葉に問題があるかもしれない。」といってさらに大きな
大学病院を勧められた。
それから最後に、
「本人に差し支えなければなんですけど、先ほどは何を・・・?」
ってきいたら、
「先ほど指を指されたときのことでしょうか。それなら『誰かを探しにいきました』と」
「誰なんでしょうか。その『彼』って人の事もおじさんって人の事も」
「先ほど彼の話を基につくってみたのですが・・・」
そこにはさっきよりも出来上がったモンタージュ写真が出来てた。さっきと違うのは、
その顔が黒く塗りつぶされてるにもかかわらず笑ってるのが分かった事。
そして、ここ最近見えていたものとまったく同じ人相であること。
俺は「失礼します」といって部屋を出て、真っ直ぐ家に帰った。
数ヶ月前、妙な事があって以来部屋に帰るのが怖くなった。
俺は布団をかぶって寝ようとした。でも、どうしてもあの少年の言葉が離れなかった。





「ここにいるよ」


多分、疲れてたんだと思う。でも、確かに部屋の中で聞こえた気がしたんだ。それで、布団から頭を出したら、


天井からつる下がった『おじさん』があった。
おじさんはロープで首をつりながら下を向いてずっと「ここにいるよ」って呟いてた。
それからしばらくの記憶がない。気がついたら家の外に出てて、ドアの前に立ってた。
大家さんが心配そうな顔で俺を見てた。
大家さんから聞いたんだけど、たまたま大家さんが買い物から帰ってきたらドアが開いてて
部屋に帰ってマスターキーで閉めようとしたら俺がドア前に立っててずっと「ここにいるよ。」
って呟いていたらしいんだ。
疲れてたんだか憑かれてたんだか分からないけど、あれ以降一切何もない。とりあえずオリジナルの
お清めでもかけとこうかな。長くなって申し訳ないです。







「ここにいるよ」

「ここにいるよ」

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