集金

444 :黒 ◆9fw1ZntG8Y :2006/07/23(日) 05:29:58 ID:GIHtzvek0

集金に行ったその家は、オートロックタイプのワンルームマンションでした。 
玄関ホールから呼び出しチャイムを鳴らしました。 
鳴らしてしばらく経って、「・・・はい」と男の人の声がしました。 
寝起きなのか、ひどくテンションの低い声でした。 
集金に来たことを告げたら、黙ってオートロックのドアが開きました。 

エレベータで目的の部屋へ行き、玄関のチャイムを押しました。 
チャイムの後にちょっと間があって、かちゃりと鍵を開く音がしてドアが少しだけ開きました。 
が、いくら待っても人が出てきません。 

仕方ないのでドアを引いてみました。 
やっぱり玄関には誰もいません。 
「すいませーん。○○新聞ですー」 
声をかけましたが、反応がありません。 

何度声をかけてもチャイムを鳴らしても、反応がありません。 
奥の部屋からはテレビの音が聞こえています。 
人がいるのは分かっているので、「あがらせてもらいますよ」と言いながら靴を脱いで上がり込みました。 

居間のドアを開けると、やはりテレビがついていました。 
けれども、部屋には誰もいません。 
念のためトイレ兼シャワーも音を確認してから開けてみましたが、誰もいません。 
さすがに気味が悪くなってきたのですが、開き直って押入まで確認しました。 

結局、人がいないのであきらめて帰ることにしました。 
無人の家なので、余計なこととは思いましたがテレビは消しました。 
鍵はかけられないのでそのままです。 

玄関を出てドアを閉めてエレベータへ向かいかけたのですが、気が変わって引き返しました。 
最後の確認のため、ドアを引いてみました。 が、鍵がかかっていました。 
ホテルのドアと同じようなものでしょうか。 
誰もいないのは分かっていましたが、ついチャイムを押してみました。 

がちゃり。 

音がして、ドアが開き始めました。 
今度はすかさずドアをつかんで自分で開きました。 

しかし、そこには誰もいませんでした。 
全身に鳥肌が立ち、猛烈な寒気に襲われ、階段を駆け下りてマンションから飛び出しました。 

店長に今までの出来事を話しましたが、勝手に家に上がるなと怒られただけでした。 
それから他のバイトがその家に行ってみたようですが、最初から何の応答もなかったそうです。 
仕方がないのでその家への新聞の配達は止めて、あとは店長に措置を任せました。 
問題の部屋はすぐに空き部屋になったようですが、その後ずっと人が入ることはありませんでした。 
 
 

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