コンプレッサー


431 :ふぃぐらし ◆pOljW.VcyA :2006/07/23(日) 05:18:35 ID:Vt3rb8bB0

ウチの地下室の部屋には、 
仕事に使われる大形のコンプレッサーが一台置かれている。 

親父からは、安全上の問題もあるのだろうか、 
小さい時からそこには近寄らないように言われていた。 
というか、俺はこのコンプレッサーが大嫌いだった。 
一種のトラウマにも近いものがあった。 

小学校、2年生の時ぐらいだったろうか。親が仕事中に、 
一回だけワクワクしながら探検気分で地下室に降りて、部屋を覗いたことがあったんだ。 

小さな、草に隠れた明かり窓から光が漏れている程度で、 
中はそんなにはっきりとは見えなかったが、 
黒の、機械音を発しているゴツい機体を確認した後に、 
俺は更に、地下室に立ち入るという衝動に駆られていた。 

その時。コンプレッサーが動き始めたのだ。 
突然の、独特のドルルルルルルンという音に恐怖し、瞬間的に後ずさりした。 
(この時少し失禁してたかもしれない。w) 
壁際にへたり込んだ俺は、 
地下室の中に、確かに何かが蠢いているのを見ていた。 

明かり窓のわずかな光に照らされて、 
黒いゴミ袋の様な物体が何かを発しながら、 
床をズリズリ這いずり回っているのを、見ていた。 
コンプレッサー音は止まらない。機械音と混じり、 
とても低い声でその黒い物体が読経をしているようだった。 

俺がその場から離れようとした次の瞬間  

・・・どこから現れたのか、親父の罵声がいきなり飛んできた。 
俺に平手打ちを一発喰らわし、地下室の鍵をぴしゃりと閉めてしまった。 
その後はお説教。この時は怒られたショックと、 
あの恐怖に臆さない親父に感心するばかりであったが、 

数週間後、思い切ってあの物体の事、あの部屋の事を聞いてみたんだ。 
全く答えてくれないんだよ。 
地下室には近寄りたくないし、部屋の中を知りたくも無い。 
だが、この親父のだんまりは現在も続いている。地下室の扉は閉まったままだ。 

前の話へ

次の話へ