夕暮れの骸

625 名前:夕暮れの骸:1 :02/06/04 18:26
都内のある高校に、ちょっとした怪談が流行った事がありました。
「校舎の横に植えてある手前から四番目のポプラの木を
 夕暮れ時に見に行くと、頭蓋骨が転がっている事があり、
 それを見た人は24時間以内に死ぬ」と言う物でした。
怪談を本気で信じて寄り付かない生徒、
面白がって見に行く生徒と生徒たちの反応は様々でしたが、
実際に何度か見に行った生徒が何も見ていなかった事等から
一ヶ月程経つと、もうそんな怪談はよくある噂話として忘れられていました。
そんなある日の事、野球部員のH君がポプラの木のほうに
飛んでいったボールを取りに行った時です。
ボールを取りに行って一分と経たない内にH君は
血相を変えてみんなの所へ戻って来ました。
先輩「どうしたH、ボール見つからないのか?」
H「それどころじゃないですよ、先輩!
  頭蓋骨が……頭の割れた頭蓋骨が
  ポプラの木のところに落ちてたんですよ!」
先輩「はぁ?お前何言ってるんだよ?
   大嘘ついてないで、さっさとボール捜して来い!」
H「違うんです、大嘘とかじゃなくて本当に……
  間違いありませんでした、頭蓋骨が落ちてたんですよ!
  誰かが悪戯で偽者を置いたのか何だか解りませんけど、
  薄気味悪いから先生に言ってどかして貰って下さいよ…」
先輩「おいおい、本当かよ……じゃあ俺から先生に言っとくからさ、
   しかし、いるんだなぁ今時そんな悪趣味な悪戯する奴…
   ってオイ一年、見に行こうとしてるんじゃねーよ!
   下らない悪戯なんか忘れて試合の続きだ!いいな!」
こうして悪質な悪戯だと言う事で試合はすぐに再開されたのですが……
その日の部活の帰り、H君は野球部顧問のS先生に呼び止められました。
S「おいH、お前何のつもりだ?
  先生をからかって楽しいのか」
H「な、何の事ですか!?」
S「とぼけるなよ、ポプラの木の下に
  頭蓋骨も、それっぽい置物も何もなかったぞ!
  あれからすぐに見に行ったんだ、間違いない」
H「そんな…僕は確かに…」
S「言い訳は生活指導室で聞く、いいな!」
S君は先生の意見に真っ向から反論したせいで、
長々と二十分も説教されました。 

その日の帰り道、H君は事故にあって亡くなりました。
スピード違反の乗用車に当て逃げされた後、
後続のトラックに頭蓋骨を砕かれたそうです。
彼が見た頭蓋骨は、彼自身の避けられない
未来を見せていたのでしょうか……

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