自殺現場

155 名前:A ◆GoP0V9Oo :02/04/16 15:13
中1の夏だったかな。
部活が終わり、「ただいまー」と家に帰ると誰もいない。
あれ?晩メシは?と思いながらテーブルの上を見ると、置き手紙があった。
「母さんも父さんも、おばあちゃんの家に行ってきます。」
「あなたも晩ご飯食べにあとから来なさい。母より」
当時ばあちゃんの家は徒歩10分ほどの所にあり、
俺の家族は月に2~3回は、遊びに行ってた。
時刻は夕方7時。部活帰りで無茶苦茶ハラも減ってたので、すぐさま家を出・・・ない俺。
それには理由があった。 

おなかもペコペコだし、すぐにでもばあちゃんの家に向かいたい所だが、
俺は靴を履くのを躊躇していた。その理由とは・・・
実は一週間前、ばあちゃんの家のちょうど真向かいの家、そのガレージで
ハタチになる浪人生が焼身自殺をしていた。
話によると、恐ろしい断末魔が、家の中にいたばあちゃんの耳にも届いたらしい。
そんな事もあり、俺は一人で歩いて行くのをためらっていた。
辺りはもう暗い。できればそんな凄惨な現場(跡)にはしばらく近寄りたくない・・・。
しかしハードな部活の練習のせいで、空腹は限界まで来ている。
ばあちゃんの家に行かないと、メシはあたらない・・・。
結局俺は靴を履いて玄関を出た。 

さんざん悩んだ挙げ句、俺の出した結論は「あんまり気にしないようにする」だった。
夜の田舎道を黙々と歩いて10分ほどすると、ばあちゃんの家と、
『問題のガレージ』が見えてきた。・・・なんか急に怖くなってきた・・・。
しかし今更引き返しても、晩メシはあたらない。
勇気を出し、小走りでばあちゃんの家を目指した。
所どころ黒く焼けこげたガレージが近づいてくる度、異様な雰囲気が辺りを包む。
灯油を全身に被り、身体に火を付けた若者はどんな気持ちで死んでいったのだろう・・・。
考えちゃいけない。今は晩メシの事だけ考えよう。
そう思えば思うほど、恐怖心は増してくる。「怖い、怖い、怖い!」
ばあちゃんの家の玄関に着いた。ドアを開けようと、ガレージを自分の背に向けた時、
俺の恐怖心は最高レベルに達していた。その時・・・ 

「怖い、怖い、怖い!」背後に異様な気配を感じながら、俺はドアを開けた。

玄関の電気は付いていなかった。外側からは人影は見えなかった。
なのに。

玄関に見知らぬ老婆が立っていた。しかもドアのすぐ内側、俺の目の前に。
多分ばあちゃんの友人かご近所の人だろう。
「うあ!!!!!!!!!!!!!!!」腰を抜かしそうになったが、自分以外の人間を見て、
後ろのガレージに対する恐怖が幾分減ったのも事実である。
(電気くらいつけろよな、もう・・・)
そのままスタスタと歩いていく老婆を見ながら、俺は考えていた。
かなりびっくりしたが、とにかくばあちゃんの家にはたどり着いた。
急に激しい空腹に襲われ、中に入ると、見慣れた家族と親戚の顔があった。
食卓には俺の大好きなエビフライの山!
今までの恐怖も忘れ、やっと有り付けた晩メシを堪能していた。
・・・が。ふと疑問が浮かんだ。

まてよ。さっきの老婆は誰なんだ?俺が来たのと同じタイミングで帰ったのに、
誰もその事に付いて話そうともしない。普通聞くだろ。
「●●さんとすれ違ったでしょ?」とか。
大体、近所の友人が帰るというのに、誰一人として玄関まで見送りに来ないもおかしい。

誰だったんだ?あの老婆は?

俺はあえて誰にも話さなかった。
10年以上たった今でも家族にこの事は話していない。
あの老婆は本当にただの人間だったかもしれないし、
そうじゃない物だったのかも知れない。
つくりじゃない本当の話でした。
長文スマソカタ

終わり 

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