白衣の下にあるもの

130 名前:12 :02/04/05 23:03
関東の北にある地方都市での出来事 

その男は思っていた「本当にうちのDrは医師免許を持っているのだろうか?」
ちょっとクランケが呼吸困難になると慌てふためいて、「○○先生をよんでちょうだい・・・早く」
男は、今ではもう珍しくもないが、まだ、異端である看護士である。Drはいわば上司である、しかしそのDrが
患者を前にしてちょっとしたことで慌てしまう、男の頭の中にはTVドラマさながらに次々と緊急の処置を見事
にこなす自分の姿があった。

うちの薬剤部は管理があまい、~今度~

今、ここにレラキシン(筋弛緩剤)のアンプルがある、ちょっと試してみよう、少し入れるだけだったら・・・・
あのばあさんわがままだし、俺の事を小僧だと思っている。 
「あんたは何回も失敗して痛いんだよ!、ねー○○さんやってくれないかい?」人の前で言うじゃねーよ。

そして、点滴用の籠に入れておこう。

おばあちゃん、点滴の時間ですよ。

何分経ってもナースコールは無かった。
処方についてDrに指示を与えてやろう、その為に何度も医学書を読み返したのではなかったか。

・・・ナースコールが鳴った!・・急げ・・

ナースルームを出たところでストレッチャーを押す看護婦が一瞬目に入ったがあとは覚えていない
気がつくと処理室のベットに寝ていた・・・床か壁に頭をぶつけたらしい、頭がズキズキする。
腕には点滴の針が刺さっている、チューブの先を目で追うとそこにはボトルがぶら下がっている。
文字が書かれている、「404号、森○○○」俺の字だ!
Drがよってきて気がついた自分の目がボトルを見つめているのをみていった。
ああ、これね404の森さん用だったんだけど、今朝違う処方箋出したんで婦長に変えてもらったのよ。
あなたが急に倒れちゃうもんだから慌てて借りちゃったというわけ。
ブドウ糖に鎮静剤を入れておいたから安心して寝てなさい。

急に激しくなる動悸のなかで、必死に叫ぼうとしたがもう声は出なかった・・・そして息も。

横にいた同僚の看護婦が耳元でささやいた。

「私がやろうとした事を、あんたがやったらだめよ」 

前の話へ

次の話へ