夢に出てきた街

542 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ :2001/07/23(月) 21:31
他人の夢の話ほど詰まらんものはないといいますが、
今朝の悪夢が忘れられんもので、書き込ませてください。
ちょっと長くなるので散文調で。

長距離ツーリングの途中、汗を流したくなり銭湯を探した所、
田舎町の商店街を貫く幹線道路に折り良く看板を見つけた。
その銭湯は幹線と並行した脇道の先にあるらしい。
幹線沿いとはいえ田舎の事、一歩商店街を外れると
一面に田園風景がひろがり、
その脇道も農業用車両の轍がついたような未舗装の農道にすぎない。

バイクを乗り入れてみると、何やら白い細々とした物体が路上に散乱し、
すぐ先に見える銭湯までも辿り着けそうにない。
仕方なく手前でバイクを停め、歩いていく事にした。
問題の白い物体は、踏みしめてみるまで気が付かなかったのだが、
その乾いた音から何かの骨と知れた。
これは犬の骨なんだ、と何の脈絡もなく直感した(夢なので)。
不気味に思いながらも、風呂に入りたいという欲求には勝てず、
何体分とも知れぬ犬の骨をパキパキと踏み砕きつつ目的の銭湯に向かった。
骨は完全に風化し乾ききったものも有れば、
丁度フライドチキンの食べ残しのように、
茶色の肉片がこびりついたままのなまなましいものまで、
様々なかたちを見せて散らばっていた。
道脇には何軒かの民家と、
水蒸気をダクトから盛んに排出している町工場らしきものが並んでいた。 

風呂に入るという一連の作業は瞬時にして果たされた(夢なので)。
汗を流した割には大して気分も良くならないまま銭湯を後にした。
空は一面鈍い灰色で、さらに気分は滅入りつつ戻ろうと前を向くと、
件の犬骨が、風呂に入っている間に出来たのだろうか、
いくつかの小山の群を成し、道を塞いでいた。
これでは戻れそうに無いと困惑し他に道はないかと見回すが、
周囲は水田の上にまで盛られた犬骨と民家の壁に遮られている。
仕方無く、来る時には感じられなかったひどい臭気に耐えながら
犬骨の山に足をめり込ませつつ乗り越えて行くことにした。
一つ目の山の頂まで達したところで眼下に二つの人影を見た。
他に道は無いかと問うと、中年の女性が不審そうにこちらを見上げ
無いと言うかのように手を振り去った。
もう一方の中年の男性も女性と同じ様な表情を浮かべ骨の山の陰に消えてしまった。
諦めてまた困難な道行きを再開すると、
先程の男性が山の合間からひょいと顔を出し、手招きする。
作業着を来たその男性に従って犬骨を踏み分けて行くが、
その男性は前に立って先導しながら、
こちらに例の不審そうな、値踏みするかのような顔を向けてくる。
自分がこのコミュニティの部外者である事を強烈に意識させられる、
そんな表情だった。

その時唐突に理解した。
俺はこれから煮られに行くのだ。
おそらくはあの町工場で。
犬の群れと共に。
体ががたがた鳴りだした。何かに脅えて震えた経験はないが、
これがその現象かと初めて身をもって認識し、
認識した事によってさらに恐怖は増した。
だが逃げる事はできないという確信があった。
逃げ出そうとすればあの骨の山に足を取られてもがくだけだろうし、
前を行く男を無力化しようと殴り掛かれば、急速に力が萎えるのだろう。
ただ虚脱感と、犬のように煮られる確信と共に、
俯いたまま男に付いていくしかなかった。


ここで目が覚めました。
文の装飾は入ってますが、夢を見ている時に感じたままを、
可能な限り正直に表現したつもりです。
所詮は夢の話なんで体験談とは比べるべくも無いですが。
しばらくケンタのチキンは食えそうにありません。 

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