留守電
379 :1/6:2009/07/21(火) 19:10:41 ID:bFjRk4350
昔地元から大阪に進学した頃の話
かなり長いです 板汚しごめんなさい
初めて携帯(ドコモP206)を買って未知の機器に感動していた
大学の友人とかバイト仲間を登録して喜んでた
一ヶ月ぐらい経った頃間違いの留守電が入った
自分の母親くらいの年(40~50)の感じの声で
「ゆきちゃん、今日お母さん録画頼まれてたけど間違えて違うの録画しちゃった
ごめんなさい、あ、ゆきちゃんの好きなケーキ買ってあるからね」
なんかすごく明るい感じでほほえましかった
ほんとは間違えてますよって言うのが親切かもしれないけど
わざわざ言う気にならなかったしちょっと面白かったのでそのままにしておいた
そのせいか月に一回か二回ぐらい間違いの留守電が入った
「明日はおじいちゃんの法事で出かけるから夜いないよ」とか
「ちょっと渋滞がひどいので帰るのは夕方くらいになりそうです」とか
たわいの無いものだった
で、半年ぐらいしてから留守電はいらなくなったからようやく
間違いに気付いたのかなと思ってたらひさしぶりに留守電が入ってた
「ゆきちゃん、今どこにいるの?どうして電話に出てくれないの?ねえ?お父さんも心配してるよ
何でもいいから話をしてくれなきゃわからないでしょう?」って
ちょっと怖くなった・・・
今までほったらかしにしていたせいもあって間違いですよなんて怖くて言えなかった
それからだんだん内容が○○外じみてきた
「ゆきちゃん、どうして電話に出ないの!留守電にして聞いてるんでしょ!早く出なさい!」
「ゆきちゃん、そこにいるんでしょ!本当にいやらしい娘ね!早く出なさい!早く!早く!」
「ゆきちゃん、ねえ!!どうして出ないのよ!!お母さん許さないよ、本当に!!」
だんだん怖くなってきたから内容聞かずに放置してた
なんだかんだで放置できたのは所詮番号がわかってるだけだと高をくくっていたから
でもある日自宅にいるときに目の前で携帯がなった。
その携帯の液晶には[間違いおばさん]と出てた
自分がそう登録してたんだけど例の人からだった
今まではバイト中とか電話取れない状況ばかりで初めてかかってた時に居合わせた
プルルルルル…プルルルルル…
とコール音の後留守番電話に切り替わる
「……………………どうして出ないの?でももういいのお母さんわかったから」
少し優しい言い方に落ち着いたのかな、と思って聞いていると
「△△に住んでる□□おじさんっているでしょ?覚えてる?
おじさんに頼んで色々調べてもらったの、おじさんそういうの詳しいから
ゆきちゃん今大阪のにいるのね、お母さんようやくわかったよ
金曜日休みとってそっちに行くことにしたからね、大丈夫、お母さん一人で行くから
家にいてね、ゆきちゃんの好きなケーキ買って行くから」
ガチャッとひときわ大きい音を立てて電話が切れた
心底ゾッとした
本当にこの場所がわかってるのかどうかわからないが
とりあえず大阪っていうのは当たっている
偶然か何かの冗談だと笑い飛ばしたかったが
電話の声は明らかに何かを確信してたし
金曜日にここに来てケリをつけるつもりなことが伝わってきた
携帯を放り捨てたかったがそんなことをしても意味が無い
アパートから出るのも時間的に無理だしお金も無い
その日金曜日家を留守にしてやり過ごしたとしてもその先どうすればいいのか
応対して知らぬ存ぜぬが通用する相手だろうか
そもそも本当にここに来るのだろうか
いままで間違い電話を放置してきたことに後悔した
恥ずかしいけれど泣き出しそうな気分だった
電話がかかってきたのは水曜日で
次の日大学もバイトも行かず一人で家にこもった
友達に相談しようかとも思ったけど相談すればするだけ
傷口が広がるような気がしたからだ
単なる間違い電話ではなく何か尋常でないものが
電話を通じて自分のところに来ているとしか思えなかった
そして翌日に金曜日を迎えた夜に僕の携帯は鳴った
見知らぬ市外局番の番号だった
もしかしてあのおばさんが、と思いビクッとなったが
出たほうがいいような気がして電話をとった
「私はいつもあなたの所に間違い電話をかけていた○○××の弟です」
電話の主は静かな物腰の男性だった
「まず長期間にかけて間違い電話をしていたことに謝罪します、申し訳ありません」
意外な発言に自分は「はあ…」としか答えれなかった
「姉は娘のゆきこを亡くしてから心身ともに病んでおりましてこのようなことをしてしまったのだと思います
今日世話をさせているものから話を聞きようやく今まで電話していたこともわかりました
姉が持っていた携帯も解約させます、今まですみませんでした」
その男性は年下の自分を相手に今までなぜ放置したかなどまったく聞かず平謝りだった
本当は色々聞きたいこともあったけど電話の向こうにはドス黒い気配がして
もう関わっちゃいけないと思わせるには十分だった
「いえ、こちこそ…すみません」そう言って電話を切った
ああ言われたものの怖かったので次の日に携帯は解約し
金土日は友達の家に泊り
その三ヵ月後には集中してバイトしたお金でアパートを引っ越した
色々疑問は残ったけどもう考えないようにした
怖い話とかそういう話題になるといつも思う
幽霊だって呪いだって全部結局は人間の感情の発露で
生きている人間が一番恐怖なんだと
少なくともその一件以来自分はそう思う