ここの住宅に住んでないかな?

87 :1/2:2008/11/24(月) 17:52:08 ID:tGjSEJw50
>82-83 を見てて思い出した話をひとつ
当時、俺が住んでた家と言うのが道路一本挟んで市営住宅と言う立地だった
平屋が幾つも連なった長屋タイプのヤツ
そう言う所って、金銭面とかその他の止む得ぬ事情で越してきた人らが住んでるものでな
今思えば町内でもどことなく浮いてる場所だった
もっとも、物心ついた時からそこにあるもんだから、特に気にしたことはなかった

小学校に上がるか上がらないかの頃の話だ。
いつものように家の前の道路で遊んでいると妙な一団に声をかけられた
黒塗りの車に黒スーツの三、四人の男たちで、市営住宅の見取り図看板の眺めながら何やら相談してる感じ
俺は特に気にせずにサッカーボールなんぞで遊んでたんだが、いきなりその黒尽くめの一人に声をかけられた

「なあ坊や、○○さんって人、ここの住宅に住んでないかな?」
俺がきょとんとしてると、男はもう一度「○○さん。ここの住宅に住んでるって聞いたんだけど、知らないか?」
住宅在住の友人が数人居るが、知った名前ではなかったので無言で首をブンブンと横に振った。
男は「そうか、ありがとうな」と言って、車の所に戻り他の男らと話し合ってる
俺は「なんだろうなー、あの人ら」くらいにしか思ってなかった

三日くらい後、その市営住宅で首吊りがあった。時間は夜の八時だか九時辺り
近所の住人が集まってワイワイ騒いでた。俺も、よく分からないが人が集まっているので行ってみた
ガキの身長なんで人だかりの中は見られなかったが、周囲にパトカーと救急車が来ていたのは解った

その、少し離れた所に例の黒塗りの車と男たちがいた。自殺のあった家の方を見ながら
何やら話し合ってるようだった。
家に帰ると、家族が何やら話し合っている。内容は良く分からなかったが「借金取りがどうとか」

俺はその時はまったく意味が解らなくて、そのまま寝てしまったが
数年経ってから何となく思い出して「まさか、あの黒尽くめの男らって・・・」
もし、俺があの時○○さんを知ってて、男たちに教えていたら――とか思うと
今でも何かぐんにゃりする

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