男と同棲

412 :本当にあった怖い名無し:2008/10/16(木) 20:15:25 ID:R2rFjveb0
昔、男と同棲してました。
すごく優しい、穏やかな人だったんです。
ポケットにはいつも詩集の文庫本が入っていて、
すごく安心できる人だったの。

長く暮らすと人間って綻びが見えてくるでしょう?
私の見た綻びは少し普通のものと違っていた。
ある日、二人でじゃれあっていたら、悪ノリで私が細い綿の紐を持ち出したの。
そう、スゥエットなんかについてるやつね。
リボンみたいに頭に結んでやろうと思って。
そうしたら「悪いことをする子は縛っちゃうわよ」って手を頑丈に縛られて
見下しながら笑ってるんだけど、なんかその笑顔が怖くて「やめてよ」って
笑いながら軽く叩いたら「ごめんごめん」って開放してくれたんだけど、
語尾とか笑顔の印象が強くて「そういう性癖の人かな」って思ってたの。

それからしばらくして、彼が突然帰って来なくなった。
電話も手紙もなくて理由もわからなかったんだけど、
ある日電話があったの。
年配の女性の声で「娘はどうしたんですか」って。
娘さんが帰って来なくて、娘さんの部屋のごみ箱に電話番号の走り書きが
丸めて捨てられていて電話をかけてきたらしい。
「○○さんですよね?」彼の姓じゃなくて私の姓を聞かれた。
「私は○○ですがお嬢さんと面識がありません。同居人はいますが△△と言います」
そう答えたけれど、すごく不審で不安感があって落ち着かなかった。
私の姓を何に使ってるの?
その子と駆け落ちでもしたの?
疑問がいっぱいだけれど、私も仕事があったからとりあえず待つことにして
生活を続けた。

それからまた少ししてから、今度は男性の声で電話があった。
「△△さんはご在宅ですか」
丁寧な話し方だけれど、彼がいなくなった日とか時間とか状況とかやけに細かく聞かれてまるで・・・・・事情聴取みたいだった。
その電話の後、不安感が強くなって「何かが起こってる」っていう嫌な予感が強くなったので
今まで信じて疑いもしなかった、彼の痕跡を探ってみた。
押入れ、布団の隙間、引き出し。確認するたびに何も出てこないとほっとした。
クローゼットの中の彼の衣類もそのままで、なんだか泣きたい気持ちでジャケットを
抱きしめた。 その時、クローゼットの隅に隠すように黒い布のバッグが置いてあるのに気がついた。 嫌な予感を振り払ってそのバッグを開けてみると、手錠とナイフが隠されていた。

動揺した私は泣きながら友達に連絡して、彼女の部屋に数日泊めてもらうことになった。
動揺が収まると恐怖感でいっぱいになった。
あの人は私の姓を使って何をしていたんだろう。
あの人は手錠やナイフを何に使ってたんだろう。
あの人はいったいどんな人間だったんだろう。
怖くて泣きながら友達にそういう詳細を話すと、
友達は「今のうちにそこから出よう」って言って、残ってた私の荷物を発送して
連絡先なんかを全て抹消して、私はその日のうちにそこから消えた。

勤め先だけは変えるわけにいかなかったんだけど、半年ぐらいたったある日男の人が会社の前で
待っていたの。 その人は「△△の友達」って名乗った。 「△△は今警察にいて、あなたに待っていて欲しいと言っている」って。
・・・・・・何したの?
・・・・・・何で警察にいるの?
それよりも、自分の今いる場所を知られるのが怖くかったから、会社もやめて、
会社にも理由を言って自分の情報が漏れないようにした。

今も自分が関わっていた人がどんな人で、何をしていたかわからない。
思い出すと薄寒い気分になる。
出来れば犯罪に関わっていませんように。

前の話へ

次の話へ