湖畔の宿

524 :本当にあった怖い名無し:2008/08/06(水) 18:56:08 ID:PXOZ2fGJ0
出かける時って、オレはたいがいイヤホンつけて音楽を聴いてるんだ。
これはバイトに向かおうと、早朝の電車に乗った時のこと。
広島の田舎は早朝の電車が極端に少ないから、逃すと本当に大変。

お客さんはまばらで席はスカスカ。
オレは端っこに座ってウトウトしていた。
オレは若いくせに昔の民謡とか童謡とか昭和歌謡が好きで、その時もそんな唄を聴いていた。
湖畔の宿っていう唄を聴いていた時、あれ?と思った。
オレのプレイヤーには、女の歌手が歌う音源が入ってるはずなのに、低い男の声が聴こえるんだよ。
うめく様なバックコーラスみたいな感じで。
何だこりゃ、音源が悪かったのか?と思って首を傾げてたら、右前方の優先座席にうつむいて座っているじーちゃんが視界に映った。
口元だけが見えて、何やらぶつぶつ喋っている。
イヤホンしてるから聞こえないけど。
でもその時に鳥肌が立った。
じーちゃん、湖畔の宿のメロディ口ずさんでるの。
イヤホンからじーちゃんの口の動きに合わせて、念仏みたいな低い声が聴こえてくる。
音漏れしてるのかと思って、イヤホンをはずしてみたけど全然そんなことない。
オレ、礼儀はわきまえてるし、ここから優先座席まで届くぐらいの爆音で音楽かけたりしない。
それにその声っていうのが、まるで耳元で囁かれているような感じで、とても距離がある風な聴こえ方じゃないの。
怖くなって次の駅で逃げるようにして降りたんで、バイトは遅刻した。
今でもあのじーちゃんが何だったのか謎です。
その後、音源を確認してみたけど、もちろんじーちゃんの声は聞こえなかった。

ちなみのその日は今日と同じく8月6日。

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