空母フォレスタル

奇怪なポルターガイスト、船内電話から聞こえる無気味な声、カーキ色の制服を着た男の幽姿…。
近代的な空母が一転、洋上の幽霊屋敷へと変貌したのは、
1967年トンキン湾近海での爆発火災事故で137人のクルーが死亡してからだという。
犠牲者の死体あるいは死体の断片は、いっとき船内の食品を貯蔵してある冷凍室に安置された。
「ジョージ」とニックネームまでつけられた幽霊がうろつきまわるのは、主にこの冷凍室あたりである。
幽霊騒ぎが起きてから、この無敵艦隊の猛者ですらそこへ行こうとしなくなった。
下士官のダニエル・バルボアはこう言う。「私は幽霊は見たことはありませんが、そこで不気味な
物音は聞けると思いますよ。私が夜勤していたときに、何かを拾ったり落としたりするような音が聞
こえました。周囲を見回しても何もそれらしきものはありません。でも仕事を再開しようとすると、
その音が聞こえてくるんです」
バルボアはこんな体験もしている。冷凍室の温度をチェックして外へ出ると、今しがた閉めたばか
りの冷凍室のドアが彼の背後で開いたというものだ。ドアは自動ロックされるので、鍵もなく自然に
開くことなど「ありえない」という。
見てしまった将兵も多い。下士官のジェームズ・ヒラードは、不審な足音をたどると、そこに
「士官クラスが着るようなカーキ色の制服を着た」男がいたという。ヒラードはその男のいる隔室に
入ると「そこには誰もいないのです。誓って言いますが、この隔室で消えたとしか思えません」。
給食担当官のゲイリー・ワイスも、ポンプ室へ通じる梯子を降りてゆく、同じくカーキ色の制服を
着た幽霊を目撃している。
ジェームズ・ヒラードは、また別の怖気だつような体験をしている。勤務中に、近くにある船内電
話のベルが鳴った。それは回線はつながっておらず使用不能のはずであると思ったものの、受話器を
耳にあてた。そこからはかすかに「助けて!助けてくれ!第6デッキにいるんだ!」と聞こえてきた。
確か第6デッキでは火災で死亡した者がいたはず。ヒラードは恐くなって、受話器を放り捨てて逃げた。

空母フォレスタルの一般的な情報:USS Forrestal・USS Forrestal Association

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