雨合羽の少女

240 :本当にあった怖い名無し:2008/01/03(木) 13:17:14 ID:qrkQj4IIO
ある男が横断歩道を渡ろうとしていると、向こう側に変わった女の子がいることに気付いた。
6才ぐらいの女の子だが、奇妙なことに雨でめないのに赤い雨合羽を着ているのだ。
そして女の子の周囲の人たちは、そんな奇妙な姿が見えないかのように無関心だった。
「あ、ヤバいもんみちゃったかな?」
そう思った男だが、いまさら目をそらしてどうなるものでもなく、仕方ないなと微笑んでみた。
やがて雨合羽の女の子は指差した。男の左数mぐらいのところを。
なぜそうしたのかはわからないが、男はその場所へと少し動いてみた。
ドン!
さっきまで男がいた場所に、背後に立っていた店の看板人形が倒れかかってきたのだ。
人形と言っても、自動で動くようにできているから中には機械が詰まっている。当たっていれば大ケガは間違いない。悪くすると死んでいたかもしれない。
恐怖でへたりこんだ彼は女の子を見た。雨合羽の少女はニッコリと微笑んでいた。

そういうことがその後も幾度かあった。男はその度に雨合羽の少女に救われた。
男はやがて少女を赤頭巾と呼んで、怖いながらも感謝するようになった。

クリスマスの夜。恋人との待ち合わせ場所に急いでいた男は、赤頭巾と最初に会った横断歩道にいた。
「まずい、遅刻だ」
慌てていた男は腕の時計ばかり見ていて、顔をあげたのは信号が変わってメロディが流れてからだった。
だから赤頭巾が横断歩道の向こう側にいて、最初と同じように指を差しているのに気づくのが遅れた。
キキーッッ!
と鼓膜に響くブレーキ音。冷えたアスファルトで滑ったバイクが突っ込んでくる。
アッ! と叫び男は目を閉じた。
再び目を開けた男が見たものは、赤頭巾が指差した、まさにその場所に突っ込んで大破しているバイクだった。
「…なんで?」
男は自分の味方のはずの赤頭巾を見た。
赤頭巾はとてもかわいらしい声で言った。
「失敗しちゃった」


今でも時折、赤頭巾は現れるそうだ。
死神はあきらめが悪いらしい。

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