弁当工場

658 :本当にあった怖い名無し:2007/12/07(金) 23:20:37 ID:2z+FsA2K0
5年前、弁当工場に努めていたときの話。

正社員のAさん55歳(♀)が膵臓癌で亡くなった。
調理や仕込みなど教えてくれ、何かと面倒見てくれた人だった。

葬式から2日たった夜、工場の責任者をしていた俺は最後の戸締りをするため
工場内を見て回っていた。
昼食メインの弁当屋なので朝早い分、夜終わるのも早い。7時過ぎには他の社
員は帰り、工場には俺一人だけ・・・。
工場は120㎡くらいで結構広く、調理器具などゴチャゴチャしているので戸
締りには結構手間がかかる。
火の元、窓の鍵など全てチェックして廻り、最後に電気を消して工場を出よう
としたところ・・・

今さっき見て回ったはずの工場から何か音が聞こえる・・。
「あれっ?」、俺は首だけ工場の中を覗き込んだ。

工場内は真っ暗で何も見えない。ただ・・音だけが聞こえる。
その音は夕方まではよく聞く音、野菜や果物を切るときの包丁とまな板の当たる「ト
ンットンッ」という音だ。
今考えればすぐに電気をつければいいのだが、俺はありえない出来事に体が固まって
しまい、入り口から工場内に首だけ覗きこむ態勢のまま動けずにいた。
一定のリズムで聞こえる包丁の音を聞きながら呆然と工場内を見つめる。
次第に目も暗さに慣れてきたが、野菜を切る場所は工場奥にあるため人の姿は見えない。

どのくらいの時間が経ったのだろう・・5分くらいか・・。わからない。
そして・・包丁の音が止まった・・・。

包丁の音が止まり、その直後だった・・。
「○○く~ん」という俺の名前を呼ぶ声!
俺は全身の毛穴から冷たい汗が出てくるのを感じた。
言うまでもないだろうが声の主は死んだはずのAさんだった・・。

続けて工場内に声が響く・・・
「仕込みが終わんないよ~~~・・手伝ってよ~~~」

声も出ない。
俺は長靴を履き替える間もなく全速力で工場を飛び出した。
事務所に飛び込み車の鍵引っつかむとそのまま車に乗り込み、一目散に家へと
帰った。

その日は飯も食わず、風呂にも入らず布団にくるまって寝た。
霊感など全くなく、一度として霊体験などなかった俺は「なんで俺がこんな目に
遭わなきゃならないんだ・・」と正直Aさんを恨んだ。

会社にも行きたくなかったが立場上俺がいないと工場は回らないため、次の日も
出社した。ただ最後の戸締りは他の者にまかせるようになった。
しかし、それ以降Aさんの霊?が現れる事は二度となかった。

後になって考えれば、Aさんは人一倍可愛がってくれた俺のことが心配で来てくれ
たのかもしれない・・・。

俺はこの件とは関係なく2年前に退社したのだが、この件にはまだ後日談がある・・。

後日談

Aさんの子供は皆家を出ており旦那さんと二人暮しだったのだが、Aさんが
亡くなってから一ヵ月もしないうちに旦那さんが自殺してしまったのだ。
首吊り自殺だった。

旦那さんは無職でAさんに頼りきりの生活だったため、今後のことを悲観
したのだろうということで話は落ち着いた。
しかし・・俺にはAさんが呼び寄せたようにしか思えなかった。

おわり

あんまり怖くなくてすいません。
でも全て事実です。

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