オシズマリ

824 :本当にあった怖い名無し:2007/10/26(金) 11:34:34 ID:HtiIGYgi0
小6の時、友人3人でスケートリンクにいった。
何周か滑って疲れたのでサイドのベンチに座った。と、友人Aが突然「ここ、どこですか?」と聞いてきた。友人Bと私は「はっ??」、さっきまでのタメ口とは違い、やたら丁寧。
「はぁぁ~~??なに、言ってんだよ。ふざけるなよぉ。」Bと私は笑った。
笑いながら、ふと 見上げた市営体育館の屋根の上に2人の人影が私には見えた。女の子ともう少し幼い男の子。宙に浮いている。
「?」私はそれまでそんなのを見たことがなかった。
気のせいと思い見えてることは口に出さなかった。上空を見上げている私に「弟です。」 Aが言った。
言われた私はぶっ飛んだ。私たちの中に弟がいるのはいない。心臓バクバク・・・こいつ、何かおかしい・・・。

Aはいったいどうしちゃったんだ?・・・Bと私は顔を見合わせた。

その間もAは、履いているスケート靴を見て「これなんですか?、こんなのですべるんですか?」「変わりましたね。この辺りには沼があったんですよ。向こうの方にはお墓が・・・。」などなど・・。
ふ~ん この辺は昔、沼だったのかぁ・・ と聞きながらもこのままでは良いはずもなく、Bと私は恐る恐るAに尋ねた。
「あなたはどうしたら元の場所に還ってくれますか?」
「もう少し周りを見てから。」Aはこたえた。 
どうしてよいのかわからず、再び氷の上を一周することにした。もともと上手くなかったAだったが、憑かれたAもあまり変わらなかったような気がする
もとのベンチに戻ってきて、Aに「これで還ってくれますか?」と尋ねると「はい」と うなづいてくれた。が、いつまでたっても還る様子がない。

また、Bと私は顔を見合わせた「・・どうしよう・・。」

「あの・・・なぜお還りにならないのですか?」 顔を見合わせたBと私は再びAに尋ねた。
するとAは「いつもの通りに還してください。」
「えっ、いつもの通りって??」私たちには何の事だかわからない。
そこで「いつも、どのようのして還るのですか?」と訊いてみた。

「オシズマリです。」
「はっ??オシズマリって??」その時の私は何かの本で読んだことがあったが深くは知らない。
この時のBと私は、憑かれたらしいままのAを彼の親元に連れ帰るしかないと思い始め同時に覚悟もしていた。
が、その前に“ダメもと”で言ってみた。「私たちは“いつもの通り”を知りません。あなたが自分の力で還ることは出来ないのですか?」ドキドキしながら返事を待った。

「やってみます。」Aが言った。続けて「私は白いご飯をお腹いっぱい食べたことがありません。還る前に白いご飯を食べたい。」

Bと私はAをリンク内の食堂に連れて行き、持っているお金を出し合ってカツ丼を頼んだ。 そして出来上がってきたカツ丼をAの前に差し出した。
Aは目を丸くして「あ~いい匂い! 白いご飯がこんなにたくさん!!」と大きな声で言う。この頃の私たちは周りの視線なんて、もうどうでもよくてただひたすら『無事に還ってくれ 本当のAに戻ってくれ』の一心。
私は割り箸を割ってAに手渡した。
Aは受け取って、ご飯だけを一口食べ「おいしい!!こんなにおいしいご飯を食べれるなんて!!」
次に卵とご飯を一緒に食べて「こんなにおいしものをたべたことがない!!」

・・・・そう言った時だった。フッとAが目を閉じた。

Aの周りの空気が変わったのがわかった。
閉じた目が開いた。・・・いつものAの目だ。

「あれっ、僕なんでカツ丼食べてるの?」その一言にBと私の張り詰めていた気が抜けた。 

あのあと、Aにいろいろ聞いてみた。

Q・「さっきまでのこと覚えているか?」
A・「いいえ」
Q・「では、どこにいたのか?」
A・「ふわふわとした気持ちのいいところ」
Q・「“いつもの通り”とは?」
A・「時々、○×○に行って降ろして(?)いる。そのことだろう」
Q・「なぜ、今出てきたのか?」
A・「わからない。何かの条件が重なったのだろう」

私たちに質問されながら残りのカツ丼を食べていたA。「他人の食べかけを食べてるようでうれしくない。」と言っていた。

前の話へ

次の話へ