非常階段

304 :非常階段:2007/07/20(金) 10:57:08 ID:wXF9Q9Tn0
1年前くらいのことです。
何時だったか・・たしか深夜1時ごろだったと思います。
いつものように、ネットゲームをしていると少し高い所から、ゼリーか何かが落ちたような音がしました。
「パキャッ」というような音でした。
あれ?何か落ちた・・ゼリーなんて、置いてあったっけ?と台所を少し、探してみましたが、ゼリーなんて落ちていませんでした。
あまり気にも留めず、またネットゲームを再開しました。
翌朝、新聞を取ろうと、マンションのエントランスに行くと自転車置き場に、青いシートがかかっていました。
飛び降り自殺があったようでした。
昨夜のゼリーが落ちたと思った音は、これだったのか、と少し背筋がゾッとしました。

ちょうど、自転車置き場のそばに非常階段があるのですがその日から、ずっと茶色い背広を着た男の人が非常階段の1階と2階の間に、立っている。
初めは、普通の人だと思っていました。
でも、背広ははっきり見えるのですが、顔がぼやけているのです。
顔色も灰色に近いです。
灰色の顔に、目鼻口の部分は黒くぼやけています。
生きている人ではないと思いました。
そこを通るたびにいるので、きっと、あの日からいつもいるんだと思うのですが他の人には、見えていないようです。
ずっと、非常階段の少し上から、自分が落ちたであろう場所を見ている感じでした。
特に、害もなさそうなので、3ヶ月も経つと、気にならなくなっていました。

ある日、また飛び降り自殺がありました。
でも、今度は違う棟だったので、落ちた音は聞こえませんでした。
マンションの友達と、こう何度も飛び降り自殺があると、怖いねと言う話をしました。
例の茶色い背広の男は、まだずっと非常階段に立っていました。
少し気にはなっていたんですが、半年ほど経った日に
飛び降り現場から一番近い部屋のご主人さんが亡くなりました。
奥さんが、朝起こしに行ったら、すでに死んでいたとのことでした。
年は30代前半で、若かったのに。

そしてお葬式に出席して、帰ってきました。22時ごろだったかな。
非常階段の茶色い背広の男が、今までずっと自分が落ちた場所を見ていたのにこっちを向いています。
あれほどゾッとしたことはありませんでした。
全身が総毛立つっていうのは、こういうことなんだなと思いました。
急いで、エレベーターに乗って、自分の部屋に帰りました。
自分の部屋に帰ると、ホッとして、いつものようにネットゲームをしていました。
そろそろ寝ようかなと、パソコンの電源を落とした時
ゼリーが落ちたような音がしました。
「パキャッ」という、あの忘れたくても忘れられない音がしました。

また、飛び降り自殺?と思って、急いで玄関から廊下に出て、下を覗き込んでみました
自分の部屋は12階にあります。
下は暗いですが、街灯もあるし、自転車置き場には、蛍光灯もついてるので下は、よく見えました。
自殺者らしき物は見えませんでした。
ふと、視線を左にそらすと、ぼんやり白い影が見えました。
あの、茶色い背広の男だなと思いました。
でも何か、様子がへんです。よく見ると、灰色のぼんやりした顔だけがゆっくり上がって来ているように見えました。

やばい
逃げないと
と思いましたが、手が柵にはりついたように、離れませんでした。
目も、灰色の顔からそらせられませんでした。
しかも、その灰色の顔が風船が膨らむように膨らんでくるんです。
5階部分を通過し、6階部分を通過して、もはや人の顔の大きさじゃなくなっていました。
怖くて動けないし、声も出せないし目も閉じれませんでした。
大きくなった顔は、何かをボトボト落としながら、ゆっくり上がって来ます。
怖くて怖くて緊張からか、吐いてしまいました。
そのとたん、手が柵から離れました。
急いで、部屋に入って、鍵を閉めました。
そして玄関に放りだしてあった数珠を握り締めて、南無阿弥陀仏とお祈りをしました。
その日は、それっきり何もありませんでした。

次の日、非常階段を見てみると、茶色い背広の男はそこにいました。
そして、こっちを向いていました。
ふと、自殺現場なのに、花が置いてあるのを1回も見たことがないと、気づきました。
花を買って、お供えしました。
そして、マンションを引っ越すことに決めました。
引越しをするまでの間も、夜に「パキャッ」という音が何度も聞こえましたが
もう、部屋から出て下を覗き込む勇気はありませんでした。
今は2階建てアパートの1室を借りています。もうマンションはこりごりです。
あの男は、今もあのマンションに居ると思います。

長文、駄文失礼しました。

前の話へ

次の話へ