C君が交通事故で亡くなった

325 :本当にあった怖い名無し:2006/11/22(水) 17:22:45 ID:nmL/0iPRO

小学五年の夏休み、C君が交通事故で亡くなった事をA君とB君から聞いた。
突然の事だったので悲しいという感情はいまいちわかず、ただ唖然として聞いていたのを覚えている。
C君とは最近そんなに遊んではいなかったが、小学校低学年の頃は、ほぼ毎日遊んでいた仲であった。
翌日気持ちの整理がつかないまま、僕達はC君の葬式に出席した。
葬式を終えて帰る途中にいきなり悲しが込み上げてきた。
その感情はただC君が亡くなった事に対するものだけではなく、僕に葬式で現れたある現象である。

その事はたびたび夢に現れ、長い間僕を悩ましていた。
20年の月日が経ち、ようやくその夢から開放されC君の事も過去の事となり、平凡ではあるが結婚をし娘を授かり幸せな日々を過ごしていた。
娘は夏に生まれたのにちなんで夏海(なつみ)と名付けた。今日は夏海の三回目の誕生日である。
妻は誕生祝いの材料を仕入れに近くのスーパーへ出かけ、僕は夏海と自宅で遊んでいた。
「もしもし、なつみちゃんですか?」僕は夏海の耳元に手を筒状にしてあてながら語りかけ「そうですー」とうれしそうに夏海が返事をする。

二人でよくやる電話ごっこである。しばらくそうやって遊んでいると夏海は眠くなったらしく、僕の背中に持たれかけ眠り始めた。
しょうがないなぁと思いつつ、横にして寝かそうと腕を動かしかけた瞬間ある違和感を感じた。
夏海がいつもより重く感じるのである、またさっきまで感じた体温が背中に伝わってこない。
少しずつ心臓の鼓動が早くなっていく様を自分でも感じものすごい緊張が押し寄せてきた。
身体が動かないのである、夏海の状態を把握しようと試みたのだが身体がいうことをきかない。
混乱状態に陥ろうとした次の瞬間

僕の耳元に夏海の声が届いた「…」
小さくてよく聞き取れなかったが確かに夏海の声だ。
耳元で息遣いも感じながら少し冷静になったように思えた。
「……よね」     全身が凍りつくかのように忘れけていた記憶が脳裏によみがえり、二度目の声は夏海ではなく一瞬でそれが誰だという事を確信していた。
20年前の夏休み、C君の葬式で僕は…たのである。
それは自分の意志ではなく、唐突に起きた現象なのだと僕は今まで自分に言い聞かせていた。
C君の命日が今日であるということも思い出し、あの夢に現れた罪悪感までも完全によみがえったのである。
「…ったよね」
僕はあの時自分の意志ではなかったが確かに…

「…らったよね」


線香をあげる時、僕はわらったのである、正確には微笑んだというべきか…
「わらったよね」


背中に感じる気配はもはや夏海ではなく、僕はもういい逃れは出来ないと確信した。

「わらったよね?」

「うん…わらった…」
かんねんしたようにそうつぶやいていた。
僕はC君の遺影の前で確かに笑ったのである…

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