本館は綺麗でいいわね

935 :その1:2006/11/05(日) 05:12:29 ID:JTIOB7t00

中学生の頃の話です。家族でスキーに行きました。
宿泊は父の会社関係の保養所で、大きくはないけれど綺麗な温泉宿でした。
夜になり母と妹がお風呂に行くと言ったのですが
見てるテレビが面白かったので、わたしだけあとから行く事にしました。

テレビが終わり大浴場に行くと、妹と母の他に客は居ませんでした。
母は「遅かったから先に部屋に戻るわよ」と言い妹と出て行き
体を洗おうとすると、すぐに中年の女性が後から入って来ました。
頭を洗ったりして湯船に入っていると、その女性も湯船に入ってきました。

なんとなく気まずいので外を見るフリをしていると
「ご家族でいらしたの?」とその女性が話しかけてきました。
驚いて「はい」と答えると「スキー旅行かしら?」と言うので頷くと
「そう、いいわね楽しそう・・・」女性はにこやかに笑いました。

その後もぽつりぽつりと会話は続きました。
「ご家族は何人?」「4人です」
「私は主人と2人で別館の方に泊まっているの。本館は綺麗でいいわね」
何の話かは分からないけれど相槌をうっているうちにのぼせそうになったので
「もうでます、おやすみなさい」と立ち上がると
「おやすみなさい、ご家族によろしくね」とまた笑顔で言われました。

広い大浴場で一人で寂しかったので、話しかけてくれてよかったと
部屋に戻り父と母にその女性の事を話すと、父が訝しげに首をひねり
「本館の改築済んで、別館は取り壊されたはずなんだけどな」と言いました。
「えーそれは勘違いでしょ~」とその話はそれで終わったのですが
翌朝何か気になっていたのか、父が宿の人に確認をすると
やはり別館はもうないし、本館以外泊まる場所はないとの事。

そこで昨晩の女性が、母と妹が浴場から出てわりとすぐに入ってきたのを思い出し
廊下ですれ違わなかったか聞くと、誰とも会わなかったと言うのです。
しかし大浴場までは長い廊下一本で、他にルートはないし
タイミング的には脱衣所で会っていてもおかしくはないのです。

なので、母がきっと幽霊じゃない?と言い出して妹が怖がっていました。
わたしはその女性が霊だったとは思いませんでしたが
ちょっぴり不思議な出来事でした。

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