誰かが見ている

843 :本当にあった怖い名無し:2006/11/02(木) 11:01:20 ID:le+OsVJh0

「誰かが見ている」

テストで89点取った日、新聞でノーベル賞を取った博士の授賞式が有った。
体育の授業で成績が伸びた日、TVでスポーツ選手が誉められていた。
美術の授業でちょっと上手く描けた日、ラジオに芸術家が出演していた。
何故か自分は、「自分に似ている」と思った。芸術家の考え方とか。

新聞で、ノーベル賞を取った博士が「町で少年がこんな事を」と話していた。
TVで誉められていたスポーツ選手が、「最近の学生は努力家だ」と語っていた。
芸術家がインタビューに、「才能の有る学生の授業風景は良い」と言っていた。
自分は周囲を見回した。自分は何故かそれを自分の事だと思った。誰かが見ている。

自分が宿題をせずに寝た朝、新聞では役目を果たさない役員が糾弾されていた。
体育の授業、サッカーで活躍できなかった日、掲示板で弱い選手が罵倒されていた。
苦手な数学のテストで、ちょっと酷い点を取った日、学生を叱責する先生がTVに。
「失望した」と語る。自分は何故か、いたたまれなくなって、ふらりと町に出た。

コンビニで買い物をした時、レジの女性が僕を見て苦笑した。馬鹿にされたと思った。
道を歩いていたら、遠くで「アホか?」という、誰かの声が聞こえた。走って逃げた。
見知らぬビル。暗くなって来て、エレベーターを降りた。気付くとビルの屋上に居た。
89点のテスト用紙がポケットに有った。誰かが背中を押した気がして、僕は飛んだ。

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