バイト中に鳴き声がする

940 :本当にあった怖い名無し:2006/08/23(水) 01:14:26 ID:nbeVW3Sq0

俺のツレと言うのが所謂、夜中の警備のバイトと言うヤツをやっていて
これはそのツレにまつわる話なんだが…
ある日、ソイツが言うんだよ。
『何かさ、最近、バイト中に鳴き声がするんだよな』
「まあ、近所に猫くらい居るだろ?」
『いや、それがな…ほら、春先によくいるだろ、盛りがついて「あーおあーお」
 って鳴いてるのが…ああいうのが居てな、正直、気持ち悪くてたまらん』
「ああ。それはちょっと気持ち悪いなぁ…まあ、頑張れよ」
その日はそんな感じで終ったんだが、それから数日後…ツレがどうにも浮かない
表情なんで、何かあったのかと聞いてみたんだ。
『前に、猫が居るって話しただろ?』
「猫? ああ、何か気味悪い声で鳴くってヤツか?」
『アレな…猫じゃ無いんだよ。多分…って言うか、間違いなくアレ、人だぜ』
「そうなのか?」
『ああ。昨日な、見回りしてたらやっぱり猫の声がしてな…でも、何か違うんだわ
 なんていうか…前より近づいてきてる感じ? そしたら妙にはっきりと聞こえてきてな
 アレは猫じゃない…人だ』
「うはぁ、それはちょっと気味悪いな…近所にそんなヤツが居るのか」
『違うんだよ』
「違う?」

『その声な…建物の中でしてるんだよ』
「おいおい。入られてるじゃないか、しっかりしろよな警備員?」
『いや、でも普通さ、窓破って入ってきたりすると警報とか鳴るだろ? 鳴らないんだよ
 それに、どこ探しても誰もいないしな…なんかもう、バイト行きたくないわ』
苦笑交じりでそう言うツレに何を言って良いのか分からずに、その日はそれで終ってしまった。
そして、やっぱりそれから数日後。
そろそろ真夜中になろうかと言うときに、ツレから電話があったんだ。
『もしもし、オマエか! これやべぇ、これやべぇぞ!』
「おいおい、どうしたんだよ。今、バイト中だろうが?」
『そうだよ、警備中だよ! っつーか、ヤバイ! ヤバイってこれ!』
ツレはやたらと焦った様子で、やべぇ! やべぇ! を繰り返す。とりあえず落ち着けと
言ってはみたが、そんな事お構い無しにヤツは続ける。
『声、するんだよ! 呼んでるんだよ!』
「呼んでる?」
『俺の名前だよ! 何で俺の名前、知ってるんだよ!? 何で、どんどん近づいてくるんだよ!?』
「おいおい、落ち着けって!」
ツレを落ち着かせようとしながらも、俺も心臓バクバク…何故なら、ぎゃあぎゃあと騒ぐツレの
背後で小さく、微かだがはっきりと「おおん おおん」って感じのうめき声みたいなのが聞こえてたんだ
『こえーよ! どうしたら良いんだよ!? こんな事、俺聞いてないぞ!? どうにかしてくれよ!』
錯乱の極みといった感じのツレの様子に、だけど俺に何も出来るはずもなく、謎のうめき声は確かに
どんどん近づいてきているようで。
『…………』
「?」
いきなり受話器の向こうから、不意に音が消えた。ぴんと張り詰めたような無音が暫く続き、
俺がツレに何か声をかけようとした、その瞬間――
『○○(ツレの名前)』
聞いたことも無いしわがれた声と共に、ツレの名を呼ぶその一言が響き渡り、次の瞬間には
それきり、通話は切れてしまった。後には呆然とするしかない俺が残されるばかり。

後日、ツレはバイトを辞めてしまった。あの時、何が遭ったのかと聞いても、ヤツは曖昧に
言葉を濁してしまう。
一体、ツレはあの時、何を見たのだろうか

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