Tの仕事場

699 :本当にあった怖い名無し:2006/08/16(水) 15:05:36 ID:3i2qOmPf0

随分前のこと、某年ジャンプの漫画家Tのアシをしていた、知人Aから聞いた話。

Tの仕事場はお寺の裏にある一軒家で、その家に「開かずの間」があったそうです。
大家からは物置だから気にしないでと言われていたし、TとAはオカルチックなことに興味ないので、二人とも気にせず仕事をしていました。
ところがある日入ってきたカラー担当の美大生が、「仮眠室の隣から音がする」と言い出し、気になったTは大家に話して、外からその部屋を調べました。
しかし部屋には古新聞の束があるだけで、他には何もなかったそうです。

そしてそれは締め切りが三つ重なった多忙な日のこと、アシを二人増員してAと美大生がこれから続く徹夜に供えて仮眠をとっていた時でした。
「コンコン」というノックが聞こえたので、Aは交代の時間かと目を覚ましましたが、ドアは開けっ放しで誰もおらず、隣の美大生は唸りながら寝ていました。
美大生が苦しそうなので起こそうかと思った時、今度はもっと強く「ゴンゴン」と音がして、それは開かずの間の壁から聞こえたそうです。
「ゴンゴン」と音が十秒程の間隔で鳴り止まないので、半分寝ぼけていたAは少し腹が立って、その壁を一度ドンッと蹴りました。
するとまた十秒経ってから、今度は「ドンッドンッ」と蹴り返してきて、Aがもう一度壁を蹴ろうとした時、突然美大生が「やめろ!」と叫んだそうです。
Aはそれでも最後にもう一度壁を蹴りました。
その瞬間、「ドシーーンッ!」という凄まじい振動で家全体が揺れ、その時仮眠室の窓ガラスが外へ向かって粉々に割れたそうです。
音はその一度だけで、被害はガラスと壁のヒビだけでした。
しかしその数日後に美大生が交通事故で亡くなり、Tはその時のアシを全員を呼んで、Aも一緒に隣のお寺でお祓いをしました。
もちろんT達は仕事場を変えましたが、その後すぐに一軒家は取り壊されたそうです。

終わり

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