雪の中

683 :本当にあった怖い名無し:2006/08/16(水) 09:46:27 ID:NZEfgpVe0

某スレで見た話を転載


今日は寒いね…唐突だが昔あった話をしよう

あれは10年くらい前、ちょうど今日のように寒く、わたしの住む地方では珍しいほどの大雪の降った日のこと。
その日わたしはいつものようにケッタをとばし、一時間近くかけて隣街の西○へと出かけていた。
家を出たときは曇っていたもののまだ雪は降っていなかったが、ケッタをこいでいる間に雪がちらほらと舞い出していた。
だが、このあたりでは積もるほど雪が降ることは珍しく、わたしはさほど気にもとめず西○へと入っていった。
その西○にはヲタ系パソショップやゲーセンがテナントとして入っており、たっぷりと2時間ほど遊んでいたわたしが外に出てみると、雪はもはや吹雪と言っていいほどの降りとなり、地面もすっかり雪で覆われてしまっていた。
こんな中を帰るのかと半分泣きたくなったが、待っていても雪はやみそうにないし、すでに日も暮れてしまっていたので、わたしは根性を出してケッタにまたがると、家へと向かって走り出した。
そして一時間ほど後。
わたしは見渡す限りの田んぼの中を走る農道を、とぼとぼと歩いていた。
雪が積もり、もはやケッタではまともに走れなくなっていたのだ。
途中コンビニなどで休憩しながら走っていたのが仇となったようだ。
普段ならとっくに家についている時間だが、まだ30分以上かかりそうだ。
日は完全に暮れ、街灯もなく、降りしきる雪で5m先すら見えない。
しばらくは右手に県道沿いの街灯の灯かりが見えていたが、その県道からは遠ざかるように農道は延びていたので、やがてその灯かりも見えなくなった。

完全な暗闇と降りしきる雪。
こんな時に出歩く人も居らず、道を行くのはわたし一人きりだ。他に人がいたらそっちのほうが怖い。
もっともその道は、あと数百mもいけば住宅街の中へと入ってく。
ケッタで数分、この雪の中を歩いても10分とかからず民家の明かりに出会えるはずだった。

暗闇の中、新雪の上を難儀しながら自転車を引いて歩いていたわたしは、やがて前方に白っぽい人影を見つけ、ぎくりとして足を止めた。
人? こんな所に?
すぐにわたしは足を動かし始めたが、わたしが近づいても人影はまったく動こうとしない。
こんな天気の中、こんな時間にこんな場所で、この人はいったい何をしているのか。足があってもなくてもシャレにならない。
うわ怖ぇ~と、びくびくしながら、声をかけられたりしないことを祈りつつ、それでもわたしはその人影に向かって近づいていった。
そしてはっきりと見分けがつく距離まで近づいたわたしが見たものは、


雪 だ る ま


ですた。

脅かすんじゃねーよばかやろうとか思いつつ、わたしは歩みを速めつつその場を通り過ぎた。
と、一分も経たない内に、再び前方に人影が。
一瞬びびったものの、気をつけてよく見れば、それはまたもや雪だるまであった。
さっきのとそっくりな不恰好なものだ。同じ人物が作ったのだろうか?
とにかくそこも足早に通り過ぎる。
だが、また一分としない内に、三度人影が見えてきた。やはり雪だるまだ。
今度もさっさと通り過ぎる。
しかしまたもや雪だるまが…。
その雪だるまを通り過ぎ、5つ目の雪だるまを見た時、わたしは本当に泣きたくなってきた。
いくつも並ぶ雪だるまも不気味だったが、そろそろ家の明かりが見えてきてもおかしくない頃なのに、それがいっこうに見えてこないのだ。
そもそも雪が積もりだしたのは夕暮れ近くで、そんな時間に誰がこれだけの雪だるまを作ったのか。
5個目の雪だるまの前に来たわたしは、逆ギレ状態でパンチを食らわした。
頭が田んぼの中へところげ落ちていく。
さらに胴体部分に蹴りを数発。
胴体も頭の横へところげ落ちていった。
わたしはそれを見届けると、ケッタを押しつつ思い切り走った。
家の明かりが見えてきたのはそれからすぐだった。

翌日、どうしても気になったので、雪の中そこまでケッタを走らせてみた。
田んぼの中には確かに雪だるまの残骸が転がっていたが、壊していないはずの他の雪だるまはその先には見当たらなかった。

とっぴんぱらりのぷう

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