築56年

157 :その一:2006/08/03(木) 02:39:42 ID:llxL1WMd0

ナメクジの話が出たところで
私がリア厨の時に体験した洒落にならない話を聞いてくれ。

私の家って、母の姉が生まれた時に建てたものらしいから築56年って所かな?
今は綺麗に内装しているけれど、トイレはぼっとん便所で風呂は五右衛門風呂、
そして台所は土間になっていて、竈みたいなものもあった。

とにかく前の台所は小さなお客さんが沢山来た。
ゴキブリなんかはまだ良い方で、ネズミやナメクジなんかがウヨウヨ。
そんなんだから、ご飯を暫くテーブルに置く場合は
サランラップを厳重に巻いたり、笠みたいなのを立てて注意を払っていた。

ある朝、いつもどおり学校に行こうとしたら
血相を変えた母親がいきなりやってきて「弁当を出しなさい」って要求してきた。
不思議に思いながらもしぶしぶ弁当を出すと
母はナフキンの結び目を解き、徐に弁当本体を取り出すと
いきなりその中身をゴミ箱に捨て始めた。

一体、何が起ったのか分からずポカーンとする私。
母曰く、釜から残ったご飯を大きな器に一まとめにして移し替えていた時、
底の方のご飯になにやら茶色いものが付いていたらしい。
当初、母はその茶色いものを‘おこげ’だと思って気にも留めていなかったのだが
よく見ると、ソレは丸くなっている部分に黒い筋があり
端っこの方に触覚と思われる物が付いていた。
「ナメクジが釜の中にもぐり込んでもたみたいで…。
‘おこげ’かと思って見たら、溶けたナメクジやったの!」

千客万来な前の台所。
赤い炊飯器が置いてあったんだけど
蓋と胴をつなぐ境目が腕白なネズミに齧られ、ちょっとした隙間が出来ていた。
恐らく、ナメクジはそこから忍び込んできたものだろうと思われる。ウチの朝は基本的にパン食なので、誰もそのナメクジ入りご飯を食べなかった。
しかし、弁当に入れたご飯はナメクジ入りご飯だったというので慌てて母親が来たわけだ。
その日、弁当を持っていたのは私だけでない。
父も弁当を持っていた。
母は父にもその事を伝えようと受話器を片手に父の会社の電話録を探し始めた。
その頃はまだ携帯電話が普及する前だったので
出社した父との連絡手段は、会社の部署に直接連絡するしか手が無かった。
父がいる部署の電話番号を探し当てたのにも関わらず
一向に連絡しない母。
「どーしよ…なんて説明すればええんやろ?また、くそんちょに怒鳴られる…」
頭を抱えて泣き出した母。
確かに連絡しようとする内容にも問題があるのだが
それよりも父の人格に大きな問題があった。

父は気に入らないことがあったらすぐに母を殴る。
母が青痣を作るのはしょっちゅうで
殴られた時には必ずといっていいほど私の部屋までやってきて
「ここ、お父さんに蹴られてん」
と言って痣を見せてくれた。
母の肌の色は白く、太ももにこぶし大の青痣が出来ているのを見るたびに凄く心が痛かった。
父の暴力で母は過去二回ほど病院に行った事がある。
父の暴力から母を庇いたい、守りたいのは山々なんだけれど、
逆らうと今度は私が殴られるので夫婦喧嘩が始まろうとするのならば
凄く卑怯だけれど自分の部屋に立て篭って
自分の不甲斐なさを噛み締めていた。

母は受話器を持ったまま逡巡していたけれど
やがて受話器を置いて、凄い剣幕で私に
「●●(←私の本名)、この事は絶対にお父さんに言ったらアカンで!」
と言ってきた。
私はただただ頷くことしか出来なかった。

よく幽霊より生きている人間の方が怖いと言う。
他人がやった事ならまだしも、自分の身内がちらりと見せた闇の部分が
私にとって本当に洒落にならなかった。
ちなみにこの話は9年経った今でも誰にも話していない。


160 :本当にあった怖い名無し:2006/08/03(木) 02:45:58 ID:Bf5zBEoSO
知らぬが仏と言いますし。


161 :本当にあった怖い名無し:2006/08/03(木) 02:57:11 ID:llxL1WMd0
>>160
それもそうなんだけどね…。
でもナメクジってなんかよく分からない病原体を持ってるって言うし…。
そんなのが液化してご飯に浸透していたのか
と考えるだけで(((( ;゚Д゚)))ガクブル

ちなみにその日の父の弁当箱を洗ったのは私なんだけど
全部綺麗に残さず食べられていました。

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