お座敷のある飲食店

832 :1/3:2006/07/24(月) 09:39:02 ID:is+ktoKx0

以前お座敷のある飲食店で働いていたときの話です。

霊感とかは無い私ですが長くウエイターをしていた為か人の気配には敏感でした。
毎回ではありませんが入店前のお客様を扉の向こうに感じ取る事が出来ました。

ある週末の開店前の話です。
私は予約のお客様の為にお座敷を準備するようにアルバイトの女の子に指示しました。

準備といっても最終確認の様なもので掃除は行き届いているか、
備品に欠けている物は無いか、座布団の裏表と向きは合っているか、といった他愛の無いものです。

彼女はアルバイトの中でも信頼できる子でしたので、
その場を任せて私は彼女の作業を横目で見ながらも他の作業をしていました。
確認完了の報告を受け、私が最後の確認に行って不備が無いのを確かめました。
彼女には私の作業を手伝ってもらう事にしました。

しばらくして隣で作業している彼女がビクッとしたのを感じました。
私もその時いつもの「お客様が入ってくる感覚」を感じ入り口へと向かいました。
まだ営業時間では無いのですが店内の作業は一通り終わっていたので、
その旨を説明しつつお席でお待ちいただこうと考えたからです。

しかし一向に扉は開きません。
勘違いをしたかなと思いつつも私は扉を開け確認しました。
そこにお客様の姿はありませんでしたが何かが私の横を通り過ぎるのを感じました。
その時はそれほど気にする事もなく作業に戻ろうと、先程までいたカウンターへ眼を向けました。

カウンターにいた彼女は明らかに何かを眼で追っていました。
視線の先は先程まで作業をしていたお座敷の方向でした。

私はカウンターの中に戻り作業をしながら彼女に「どうしたの?」と尋ねました。
彼女の答えは私の常識の外にあるものでした。「お座敷を走ってるんですけど…」
私は訳がわからず「何が?」と尋ねました。
彼女は「いえ、もう大丈夫みたいです」と答え溜息をつきながら作業を続けました。

なんとなく理解した私は「もしかして見える人なんだ?」と尋ね、
彼女は「たまに・・・今日は感じただけだけど…」と答えてくれました。
週末でしたので準備する事も多く、その話はやめて二人で作業を続けました。

開店時間15分前となり、デスクワークをしていた店長が朝礼を行う為に店内に現れました。
朝礼中に予約席の確認をしていた店長が座敷を見てこう言いました。

「なんで座布団が全部裏返しなんだ?」

私は背筋に冷たい物を感じましたが開店まで時間が無いので慌てて座布団を直しに行きました。
彼女も手伝ってくれましたが「私、ちゃんとしてましたよね?」と小声で私に言いました。
私もそれは確認しました。
そもそも座布団が裏になってる事が少ないのです。
酔って羽目を外されたお客様がお帰りになる時でさえ裏になってる事はほとんどありません。

私が感じた気配、彼女が感じた物、それがやった事なんだろうなとは思いましたが、
その目的が理解できずに悩みながらその日は働きました。

私にとっては信じがたい出来事でしたが、
実害がほとんど無く大きな恐怖も無いだけに受け入れるのは容易でした。

その後、彼女とは話す機会が増え、その影響か私もなんとなく感じる事が多くなりました。
もちろんはっきりとわかる訳ではないですし単なる勘違いかもしれませんが…

それを感じるのは彼女と一緒に働く日だけだったりしたので、
よく言われる「見える人と一緒に居ると霊感が強くなる」ってのは本当なんだな、と思いました。

怖くないかもしれませんが、私の体験した私にとってはほんのり怖い話でした。
乱文長文失礼しました。

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