何かが当たっているような音

689 :本当にあった怖い名無し:2006/07/19(水) 02:26:08 ID:+yiORnQe0

 遂、一ヶ月前に自分で体験した話。

 夜中の三時頃だったろうか?
俺が住むボロ・マンションの扉(金属製)に何かが当たっているような音で目が覚めた。

 実はうちのマンションの自治会には回覧板があるのだが、それを直接に隣人が持ってくる事はなく、
読み終えたら捺印して次の部屋のドアノブにかけておくのが暗黙の決まりになっている。
それで、かけられた回覧板が風か何かのせいで揺れ、ドア本体に当たっているのだろうと思ったのだが・・・

 どうもそれにしては音が鳴る間隔が規則正しい。
しかも回覧板よりも柔らかい物が当たっているような気がする。
気になった俺はベッドから抜け出すと、玄関の方へと向かった。
(ウチは2LDKなのだが、夏の間は仕切りを全部はずしてワンルーム状態)

相変わらずドアからは音がする。
「なんだろう?」
嫌な感じがした俺は、いきなりドアを開けずにドアについている覗き穴から外を見た。
・・・が、何もないし誰もいない。見えるのはマンションの無人の廊下のみ。
「?」
ベッドに戻ろうとした時、また何かが当たる音がした。
もう一度覗き穴から外を見た。
・・・が、やはり誰もいなし何もない。
今度こそベッドに戻ろうとしたその時、確かに聞こえたのだ。
消え入りそうな女の子の声が・・・
「え?」
慌てて俺はドアに耳をくっつけてみたが、何を言っているのかわからない。
再度、覗き穴から外を確認するが、やはり誰もいない。
その間もドアを叩く音は続き、その合間には女の子が何かを言っている。
突然の異常事態にどうしたらいいのかわからなかったが、このままこの状態を続けても埒があかないので、思い切ってドアホンから外に向かって言った。
「誰です?何の用です?」
ダン!・・・
その時、今まででもっとも大きくドアを叩く音がした。

「・・・」
その後続くしばしの静けさ。
俺はドアに近づくと殆ど呼吸もしないような状態で、外の気配をうかがった。
パタパタ・・・
数秒後、廊下を走り去る足音(たぶんサンダル履きの音)が聞こえた。
「何者だったんだ?」
相手が立ち去った安堵感よりも好奇心が勝った俺は、正体を見極めるべくすぐにドアを開けた。
・・・が、誰もいない。
「どこだ?」
耳をすますと、マンションの表玄関の方で足音がした。
どうやら逃げて行くようだ。
廊下の手すりから身を乗り出して下を見た。
俺は呆然とした。
足音はするが誰の姿もないのだ。
パタパタパタ・・・
誰の姿もないまま、足音だけが走り去って行った・・・

 それから数日は夜三時半頃になると目が覚めるクセがついてしまったよ。
でも、あれは何だったんだろう?
もし、いきなりドアを開けていたら何者かが入って来たんだろうか?
そしてそれはどんな姿をしてたんだろう。
いまだに心当たりもないし、その正体はわからない。

これは脚色なしの実話です。
いやはや自分がこんな体験するとは・・・

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