五差路

109 :本当にあった怖い名無し:2006/06/29(木) 10:58:04 ID:ufr9iqET0
高校時代の話。
美大受験のため、自宅の最寄り駅を通過して毎日遠くの予備校に通っていた。
批評会などがあった日は帰宅は深夜になることもあったが、
親は私がお金のかかる大学を選んだことであまり良い顔をしていなかったので
送迎などの手助けは一度もしてくれなかった。
駅からはいつもチャリをこいで家路についていた。
秋ごろのある日、いつもより遅くなり駅に着いたのは23時過ぎ。
気候が良かったのでかなり気分も良く、
駐輪場で自分のチャリを見つけて漕ぎ出したが、その日は表通のバス道を行かず、
(バス道は登り坂や寺があって人通りが少ない)時間が遅かったので裏の住宅地を通った。
車ならすれ違うのも難しいほどの細い道を行き、シーンとした家の軒先をつうかしていくと、
途中集会場のような建物がある開けた場所に出る。
そこは細道の五差路になっていて、私は自分から見て右手奥の集会場左脇を抜ける道を行く。
建物の前は小さな三角形の空き地のようになっていて そこには一本の街灯に照らされて
お地蔵さんと電話ボックスとポストがある。
三角地の先端に当たる道路側には車が突っ込むのを防ぐための大き目の石が置いてあったのだが
それらが五差路に差しかかるかなり手前から見えてくる。
ふと見ると、その石の上に人が立っている。
警備員が立っている。
こんな時間に車も来ない道に変なの。
と思ってよくみると…目をカッと見開き、足を少し広げ、
膝を曲げて中途半端に前かがみになり、右手に棒を持ち、左手も少し前に突き出して
微動だにせず立っている。
怖すぎる・・・でも引き返せないし、通過だけだし、
警備員なら大丈夫かも・・・こっち来ません様に・・・
と恐怖に慄きながらも目は外せずに、1メートルほど左側を通過。
その間一度も瞬きせず、視線も斜め前を見据え、おかしな姿勢で微動だにしなかった警備員。
オレンジ色の制服を着てあんな時間に古い住宅街の一角で彼は何をしていたんだろう。
腰に負担のかかる変な姿勢で、怒りをみなぎらせたような血走った目で…
工事等で警備の必要な様子は前後には全く無かったし、なにより不気味。
いまだにあの夜のことは忘れられない。

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