脳の萎縮

588 :本当にあった怖い名無し:2006/06/12(月) 13:01:36 ID:5Uv5HmGu0

私は医者に訊ねた。
「先生、もう母の脳の萎縮は元に戻らないのですか?」
医者はちょっと躊躇して
「戻らないと言う事は無いが、これほど萎縮しているのはわたしも始めて診るのでね、なんとも。
脳の蜘蛛膜との空間が2センチもあるのですよ。
頭の聴診でも分かりますよ、いいですかまず健康な脳です。」
そういうと、医者は横にいた見習い看護婦に横を向かせて、髪を上に束ねさせた。
そして、側頭部をグーで数回強く叩いた。
ゴツ、ゴツ、ゴツ、と鈍い音がした。
かなり痛かったのだろう、看護婦は頭に手をやって盛んに擦っていた。
半分涙目になっていた。
「ところが、病気でなくても脳が小さく空間が出来ている子がいる。
世間でよく言ってる脳ミソが少ないバカな子の頭だな、えーと誰がいいかな。」と言って周りにいる看護婦を見回した。
看護婦はみんな顔をうつ伏せた。

ずんぐりと太った不細工な看護婦に目をやると、
「お、いたな。ちょっと貸して。」と言い、同様に側頭部を数回強く叩いた。
コン、コン、コンと乾いた音がした。
見事な音の変化に、看護婦たちから「おー」という感嘆の声が上がった。
「どうだ、こんなに音に違いがある。
だから脳ミソの大小は直ぐに見分けがつくぞ。
これはスイカの身が熟れているか、カスカスかって判断にも応用が利く。」と自慢げに胸を張った。太った看護婦は、頭の痛みと心の痛みの両方で、目から大粒の涙をポロポロと落とした。

この後、太った看護婦はこのとき受けた心の傷が癒える事がなく、失意の中で病院の屋上から投身自殺を図る。
そして、亡霊となってこの医者に恨みつらみを言い、しつこく祟るのである。
この医者の深夜の当直勤務の怪異、病院地下遺体安置所の謎、医者の結婚披露宴での怪奇記念写真、新婚初夜の全て、花嫁の初夜での異常性行動等々。
まだまだ怪奇譚は尽きない。

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