寮の自室

893 名前:1/2 :2006/05/12(金) 15:58:31 ID:0BxlpcKD0
大学の頃、寮に住んでたんだがその寮の自室での話。

なんとも言えないほど汚い寮で、廊下の壁や床のタイルは至る所が剥がれていて、
卒寮生が書き残してゆくのか、廊下に限らず部屋の中もあらゆる場所に夥しい量の落書きがされてる所だった。
(もちろん備付の机にも落書きはある。勉強のときイヤでも目についた)

俺の部屋は2人1部屋だったんだがある夜、夜中にふと目が覚めた。
窓の外には(カーテンはしてない)寮の中庭が広がっており、夏だったので草がかなり伸びていて、風が吹いてさわさわと鳴る。
(1月に一回は草刈をやっていたが、それでも草が伸びるのは早い)

暑くて寝苦しい夜に草が擦れ合う、あの「さわさわ」という音はとても心地が良い。
その「さわさわ」にしばらく耳を澄ませていると、「さわさわ」の中に「サクサク」という音が混じっているような気がする。
はじめは気のせいかと思っていたが、耳を澄ますとやはり、わずかにだが「サクサク」と音がする。
その音を聞いているうちに、なんとなくその音が「人や動物が草を踏み分けて移動する音」であるような気がしてきた。
考えれば考えるほどそんな気がする。
その音を聞いている内にオチオチ寝ても居られなくなって、その音の正体を突き止めてみることにした。

木の枠のベッド(2段ベッドじゃないから部屋が狭い、狭い)から置きだしてそっと窓に近づいて外を見てみた。
音の正体はすぐに分かった。やはり人だった。
夜中だったのではっきりとは分からなかったがその人は白いローブのような服を着た女性(?)だった。
黒くて腰までありそうな長い髪をしていて、服の白させいか、髪が普通よりもずっと深く・黒い色に見えた。
うつむき加減で寮の中庭を徘徊している。ふらふら、ふらふらと特に目的もなさそうな歩き方だった。
しばらくその人を観察しているうちに、目が合ってしまった‥‥ような気がする。
というのも、俺は目が悪くて眼鏡をしていなかったのでその人がこっちの方を向いたことしか分からなかったからだ。
それに顔が見えない。どんな顔なのか見えれば目が合ったかどうかは分かるんだが。
もしかしたらただ単に宙を見ていたのかもしれないし。
その人と見つめあう事10数秒‥‥ようやく他の方向を見てくれた。
でもその後その人が帰ってゆくまでの間ずっと動くことが出来なかった。
急に動いたりしたらこちらのことが相手にばれてしまうのでは?ばれたら何か恐ろしい目に遭うのでは?
と思ってしまったからだ。

あの人は一体何なんだろうか‥‥寮の先輩の中には白い服の幽霊を見た人が居るらしいがあの人もそうなんだろうか?
ついにあの人を見たのはあの夜のとき一度だけになったが、そのことが少し気になる。

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