邪魔がはいる

9433:■忍【LV0,作成中..】:19/11/02(土)21:54:03 ID:9eI ×

ここであってるのかな? ちょっと思うところがあったので投稿します。
長いのはすまん。

自分ももういい歳になったって言うようなそんな年齢になった。
ある夏の日に町を出た友人がこちらに帰ってくるってことで飲みに行くことになり、数年ぶりの再会。
他の友人も一緒で四人で飲みに行った。
会社だときっとこんなんじゃないんだろうな、って学生時代のような懐かしい若々しいノリで酒も入る、料理も美味い。
確かその日はなにかの心霊番組がやっているらしく、娘が楽しみにしていたという話しから飲みながら怖い話をしようということになった。

私は彼のようなエリート路線ではなく、ごくごく普通の一般人ではあるがひょんなことから不良(まぁ暴走族だね)と十代から関わり、
廃墟探索とか心霊スポット巡り。

いろいろとやったので体験という意味ではしている。
ただ怖いかどうかと言われると微妙だし、そもそもその人についっていっても怖い体験をしないという直感があったからついて行ったりしたのだ。
そう、なにせ体験したにしても全て微妙なものばかり。

自分の番が回ってある話をした。それは奇妙なもので、アイディアが降りてきたような閃きとともに思い出した話だ。
これは自分一人の時にあった話しで、これも全容もまた微妙なものだが。
あった際もただただ目を合わせなければいい、という直感を信じて行動しただけだ。そんな話。

内容は、二十代前半。この感というものが異常に強くなっていて、というか霊感か。
霊感が強くなって見えてはいけないものが見えるようになっていた。
特に酒をちょこっとだけ飲むと更に見えるようになったので酒は好きだが飲むのを控えるようになっていた。

ある日、仕事で嫌なことがあったので一人で飲んだその帰り。
当時は実家のアパートに住んでおり、二階に部屋を借りていた。
アパート自体は二階建てで、駐車場から玄関の扉が見え、一棟に四部屋ある。
ハイツとかコーポとかそちらの方がしっくり来るだろうか。

ここらあたりまで話しをすると、
一人の友人(Aとする)が「それ昔にも聞いたことある。でも内容覚えていないんだよな」と言った。
そうだろうと心の中で頷いた。
昔も何度かこの話をしようとしたのだが、なにせ話し終わるまでに必ずといっていいほど邪魔されるのだから。

昔の住んでいた場所を思い出してもらい、そこから話を続ける。

酒を飲んでいたので、また見えてしまうのかなとびくついていたが実際はそんなことはなかった。
ただ町が異様に暗く、そして静かだった。金曜の夜だというのに。

家に着くと、「あぁ、」と諦観したように心で納得した。
玄関の前に黒い塊があったのだ。街灯に反射せず、二次元的に見える物体。
もうそれだけでいつも通り、見てはいけないものを見てしまったな、なんて思ったが体がおかしかった。
脂汗を額にかいて、それとその例の感が働く。「悟られるな」と「目を合わせなければ大丈夫」だ。

この時に、飲み屋の従業員に「ラストオーダーの時間です」と告げられた。
皆もいい歳だ。もうそんな時間かと、いそいそと帰る準備をし始めた。
やっぱりこうなったか。と思っていたがこの日はそれで終わらなかった。

私は独身なので、せっかくのいい気分なので一人で飲んで帰ろうかなと思い、皆で駅の方には歩かず、近くのバーへと足を運ぶことにした。
(先ほど書いた飲みに行ったところでもあったりする)
こぢんまりとした、いい店なのだ。

席を案内され、おしぼりを渡され、注文を終えるとAがやってきた。
隣に座ると彼に「ここ、知っていたんだな」というと「いや、あの話をなんだかどうしても聞きたくなってさ」とあどけない子供のように言った。
知っていたというより後をつけていたようだった。

客はいないが場所も場所だしな、なんて断る文句を考えていると誰かを連れてくるなんてことを滅多にしなかったので、
マスターが「お、なんの話?聞きたいわ~」なんて言ってくる。
しょうがないので話を続けることにした。

その黒い塊は大型犬が丸くなって寝ているようなサイズで今で言えば、配達された段ボールが家の前にあるような。
ともかく、どう「悟られるな」だよなんて毒づいていた。
しかし、そんな大きな物体にどうすればいいかもわからずに、階段をいそいそと上がる。
階段を上がると踊り場だ。もう半分。下を向いていた顔を少しあげるとまだ黒い塊があった。顔が歪んだ。まだ居たのかと。

仕方がないので上がる。目を閉じていても一段目に足をかければ分かるくらいには住み慣れた場所だ。
だが目を閉じずに下を向いて上がる。残り三段、というところで思わず足が滑った。
踏み外した、とかそんなのではなく、脂とか雪とか、そんな具合な滑り方だった。
体が前に傾く、思わず目に黒い塊が目に入る。階段の一番上を両手を伸ばして、頭を打つところを回避する。

ここまでが今まで話した中でも一番長い部分だ。
幸い、客がおらずマスターとAと私だけで、滞りなくここまで話が出来た。
なんて思っていたが不意に「危なかったね」っていう小さい女の子の声がした。

そこで私ははっとなり店内を見渡すと、彼らも周りを見ていた。
「聞こえた?」
「うん」
そして静かに首肯するマスター。

この話しをすることをやめてちょっとしたネタばらしをしたのだ。
昔からこういったこともそうだし、なにかとこの話しをする際には邪魔がはいる、と。
そして自分の興がそがれ、話しを途中でやめると。
ともあれ、その後は昔の話しや滅多にバーなんて来ないAだったので酒の話しとかなんやかんやをして終わった。

あの声の主にも心当たりがある。
ネット媒体で大丈夫だろうから書きとどめておくと、
あの黒い塊の中身をを案の定覗いてしまった私は、必死に目線を左に向けて目だけは合わそうとしなかった。
しかし反らしていても見えてしまうのはその塊との距離が異様に近いからだ。

中は、黒いが肌が青白く、真っ赤な着物を着た女の子で、おかっぱで、目が黒く、歯というか口が黒かった。そんな彼女が笑っていた。
その時、その黒い塊にあるはずなのに、耳元か、頭の中で、その時聞いた少女の声が聞こえたのだ。「見えてるくせに」と。
そして溶けるように黒い塊は消えて、慌てようにも、攣ったように痛い右肩のため、急げずにいそいそと体制を直して家の中に入り、たまーに着いてくる幽霊(?)を部屋に招かんし名犬であるうちの愛犬ポメラニアンをベッドの上に置いてそのまま寝たのだった。

そういえば、その頃から右肩が痛むのを今更になって思い出した。

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