山みさき

338 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/12/25 18:38
朝日新聞12月20日『声』欄 
山口県下関市 76歳

健康のために歩いている。
先日、近くの山すその道を歩いた。途中でかつてない倦怠感と脱力感に襲われた。
どうしたのだろう。ゆっくり歩きながらも心細くなってくる。

やっと家に帰り、2時間ぐっすり寝こんで眼が覚めたら、私は祖母から聞いた『みさき』の話を思い出した。 
私の郷里では、山や川で気分が悪くなったりすると、「それはきっと山みさきに遭うたのだ」と言った。
みさきは、目には見えない神の使者か山の精のようなもので、
年中山や川を巡っていて偶然それに遭うと、人は病気になったりする。 
そう聞かされて、子供心にも自然に対する畏敬の念を持ったものだった。

その頃は、大人も木や石の盗掘などしなかったような気がする。
辞書をめくってみると、『御先、御前』として、同じようなことが載っていた。 

下の妹にこの話をしたら、「聞いたことがある」と言ったが、他の妹たちは「岬なら知ってるけど」。
これも私たちの年代で消えてゆく話なのだろう。

前の話へ

次の話へ