出来損ない

359 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/10/02 23:38:42 ID:UXyuxyzL

友人の話。 

彼の実家の山村では、時々おかしな存在が出たという。 
それは、村の衆から『出来損ない』と呼ばれていた。 

炭焼きをしていた彼の祖父も、『出来損ない』を見たことがあるという。 
薪の山のすぐ横を、灰色の兎のようなものが駆け抜けたのだと。 
それは確かに兎の耳と胴体を持っていたが、決して兎ではなかった。 
その頭部には目も口もなく、その身体を動かしていたのは黒い蟋蟀の脚だった。 

その後も小屋の近くで何度か見かけたそうだが、その度に段々と本物の兎らしくなっていったのだそうだ。 
『出来損ない』の正体は誰も知らなかったが、
「おそらく山の動物を真似しているのだろう」と村では言われていた。 

まれに、人間を真似しようとした出来損ないが出たらしい。 
そうなると、しばらくは誰も山に入れなかったそうだ。 
過去に人間に化けた何かが出たことがあるのだろうか。 

今は炭焼きや猟をする人もおらず、『出来損ない』がまだいるのかはわからない。

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