一台のバン

586 名前:本当にあった怖い名無し :2005/08/01(月) 17:28:08 ID:gIhayzOe0
オカルトではないんだけど・・・ 

今から十年以上前の事 
うちの家は二車線の道路と四車線の道路とが交差する、交差点の角の一つに建っていた。 
窓からは二車線の道路の横断歩道と信号見える。 
ある夜更け、多分二時頃だったと思うが、夜の町の景色が好きだったので寝る前に何気に外を見た。 
外は珍しく車の走行もなく静まり返っており、私は子供心に静かな夜の街の雰囲気を楽しんでいた。 
すると一台のバンが、眼前の横断歩道に乗り上げるような形で止まった。 
同じ青信号で止まるなら、停止線くらい守れよな、と思いつつその車を見るともなく見ていると 
そのバンの横の扉が勢い良くスライドし、大学生かもう少し上くらいの青年が飛び出してきた。 
そしてその青年を追いかけるように、同じ扉から一人、運転席の方からも一人、同年代風の男が飛び出してくると 
先に飛び出した青年を後から掴み、二人掛かりで抱え押さえ込むようにしてバンの中へと文字通り放り込んだ。 
男の一人が一緒に中へと入り込む。 
私は何か不穏なものを感じて、とっさにカーテンの陰に隠れながら見つづけていた。 
まだ外にいた一人の男は、青年との揉み合いの際に脱げて飛んでしまった青年のズックを 
バンの中に投げ込むと勢い良くスライド扉を閉め、殺気だった様子で周囲を数回キョロキョロと見回し、 
そそくさと運転席へ乗り込み、青信号にも係わらず急発進で走っていった。 

正直、ものすごく犯罪の匂いを感じた、警察に届ければいいのかどうすればいいのか判らず、 
私は軽いパニックになっていた。横から見ていた構図なのでナンバーもわからない、車にも詳しくないから、 
多分バンだとしかいえない程度の知識。 
警察に電話してもどう言えばいいのかわからず、結局そのことはそのままになったが・・ 
それからしばらくしてオウム事件が世間を騒がせ、拉致監禁と言う言葉が紙面を飾った。 
あの光景の胡散臭さは、何も出来なかった無力感と共にずっと忘れられない。 
あれは一体なんだったんだろう。あの青年は大丈夫だったんだろうか。 
自分にとっては怖い思い出です。 

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