事故物件

450 名前:本当にあった怖い名無し Mail:sage 投稿日:2019/06/24(月) 01:23:26.15 ID:wRVTGMDi0
大学時代沖縄出身の友達が事故物件住んでた。
造りは古いが風呂もついてて明らかに相場の半額に近い値段。
どんな事故なの?って言ったら前に住んでたお婆ちゃんが強盗に襲われて死んださー
と明るく言った。でも俺自身は霊感ないから平気さー何もないよーと笑ってた。
大学に割と近くてたまり場になってたこともあり俺も何度も泊まった。

ある日、男4人でそいつんちで飲んだあとそのまま雑魚寝してた。
すると夜中3時ころか変な音で目が覚めた。
誰かのいびきかヒューヒューと息苦しそうな呼吸音が聞こえる。
顔を上げようとしたが体が動かない。と言うか指先も動かない、初めての体験だった
んだが、もしかしたらこれが金縛り?と冷や汗が噴き出した。
暫く体を動かそうと頑張ったが金縛りは解けず、何とか動く視線で上下左右に
見渡すと、右下の視界遠くに見える押し入れの襖が音もなくスーッと開く。
泥棒か?と視線を動かさずにいると押し入れの上の段から髪が真っ白で和服姿の老婆が
にゅうっと半身を現した。老婆は長い首をまわし部屋の中を確認すると崩れ落ちてくる
ように押入れから出てきた。
ずるりと畳に着くと暫く伏した後、畳を這い動き回ろうとしている。
友達たちは誰も起きようとしない。
これは見たらいかんやつだと思ったが視線を外すことが出来なかった。
老婆はうつぶせで畳に爪を立て部屋の徘徊を始めた。
俺のちょっと右で寝てる友達の顔を覗き込んでいる。
それから俺の足の方へ移動して視界から消えた。

ああ、行ってくれた…と思ったらガッと左足首を掴まれた。
硬いジーパンの生地の上から確かに掴まれた感触があった。
そして俺の足の下の方からゆっくりと登ってくる。
身を引き摺りながら冷たい体がももの上まで登ってきた。
ヒューヒューっと空気の抜けるような音がへその辺りで聞こえた。
目をつぶらないと、このままでは起きているのがバレてしまう。
瞼に全神経を集中して歯を食いしばって目を閉じた。視界が真っ暗になった。
良かった、寝たふりをしとけばどこかへ去ってくれるだろう。
体は震えてるし冷や汗で全身が濡れている。傍から見て起きているのは丸分かりだ。
けど、取り合えずそれを見たくなくて目をつぶってやり過ごすことに集中した。
次に左肩を掴まれた。へその上を冷たい何かが通過した。
目を固く閉じて無心を装った。暗闇の中で寝てます寝てますどうか次へ行って下さいと祈った。
しかし、次の瞬間、顔をアイアンクロー状につかまれた。
痛くはないし重量も感じないが冷たい5本指の感覚は確かにあった。
体がビクッと震え、声を上げそうになったが何とか堪えた。
何故か目を閉じてる筈なのに視界ににはっきりと手が映った。
あれ、俺目を閉じてないの?と瞼を動かしてみたがやはり目は閉じている。
すると俺の顔を覆う指の隙間から老婆が俺の顔を確認するように覗き込む。
そして「ミエテイルダロ……」と俺の耳元で囁いた。
鬼の形相の老婆とはっきりと目が合った。
叫びそうになった、泣きそうになったが、ただ心ここにあらずという体で無視してた。
ヒューヒューと言う音は老婆の首に突き立った包丁の穴から漏れる空気の音だった。
老婆は俺の顔を確認するとまた畳に爪を立て次の友人へと這って体を進めていった。

恐らく4人全員の顔を確認すると老婆はまた押し入れの襖をすーっと開けてずるずると
押入れの中に入っていった。
老婆が言っても俺は体を動かせずにいた。
誰か起きてこないかと思ってたが3人とも何事も無いかのように寝息を立てている。
そして俺もいつの間にか寝入ってしまった。
翌朝、カチャカチャという食器を洗う音で目が覚めた。1人はもう授業へと出て
行ってて残る2人が拾ってきたテレビを見ながら飯を食ってた。

俺が昨夜の話をするとおばあは何もしないさーだったら平気だよーと言って笑ってた。
もう一人は引き顔で聞きつつも本気にせず笑ってた。

後で聞いたが前の住人のお婆さんは強盗に首や背中の複数を刺され逃げるように押入れ
中で息絶えていたのだと。
最後に見た景色だから今でも気持ちが残ってるんだよと彼は明るく言っていた。
彼はそこで何があって何が出るのか、不動産屋で聞いていた。
でも苦学でもあったので家賃を優先させたらしい。の同級生は卒業までずっとそこに住んでた。
幽霊って目を閉じていても見えるものなんだろうか。人生唯一の霊体験で得た謎だ。
そのアパートは今でもある。

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