749: 735 2005/04/05(火) 18:43:55 ID:iElp/D2E0
これは1987年の2月末から3月にかけての山行での話です。

中央線沿線の山に登る人にはポピュラーな23:50(うろ憶えです)新宿発の 
各停に乗り塩山で下車、少しの距離をタクシーに乗りある山の登山口に着きました。 
明るくなると同時に山に入り、30分くらいしか歩いていない地点でのことでした。

まだ薄暗いなか、2名の下りて来た人を見て私たち3人は凍りつきます。 
堅牢な登山靴・ツーイードらしいニッカ・その下から覗く赤いソックス・チェック 
のネルシャツという真冬にしては少し軽装備ではありましたが、彼等の服装は山中 
で違和感のないものでした。 
しかし彼等2人は自分の首(と思われる・あるべき場所に首はなし)を小脇に抱えて 
歩いているのです。 
何秒か後には私たちに見向きもせず(もっとも見向く顔がありませんが)、私たちの 
横をしっかりとした足どりで通り過ぎて行きました。

リーダーの「振り向くな!」の声を無視して彼らの後姿を見てみると、彼等は少し前 
に流行ったフレーム付きのザックを背負っていまいた。 
脇の下から覗く首には(胴体と繋がっていたであろう部分の意味での首・顔の部分は 
多分下向きに抱えていました)出血はありませんでした。

私は、彼等が木々の間に隠れて見えなくなるまで、何の感情も無く見送っていたのを 
憶えています。

雪(風花かも)が少しだけ舞っていました。

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