ロープウェイ

754: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2005/04/05(火) 21:18:18 ID:11bI3o160
ロープウェイなど、普段なら使わない俺だが、時には 
高みから谷間や峰を見下ろしたい気分になる。
時季はずれということもあり、ロープウェイには 
俺の他に、夫婦らしい男女が二人乗っているだけだった。

晴れてはいたが一部に雲があり、行程の半ばあたりまで 
来た頃、その雲の中にいた。 
一番景色がよさそうな場所で雲にぶつかるとは、ついてない。 
やれやれと息をつき、ザックのポケットから携行食の 
小さなチョコレートを出し、口に放り込んだ。

やがてロープウェイのプラットフォーム。 
係員が扉を開け、同乗の二人連れが席を立った。 
「しばらくご一緒しませんか。」 
山ではよくあることなので、同意し、立ち上がった。 
彼らが降り、俺も続こうとしてふと気づいた。
着くのが、早すぎる。

「すいません、この先で降りますから」 
係員に声をかけ、先に降りた二人連れにもそれを告げた。 
「そうですか、ではお気をつけて」

係員が無言で扉を閉めた。 
俺一人がロープウェイに残り、そのまま進んだ。

振り返ったそこに、プラットフォームなど、無論ありはしない。 
大きく息をつき、静かに手を合わせた。

上まで行ったら、小さなケルンを二つ作ろう。 
そう思った。

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