赤間神宮

658 :本当にあった怖い名無し:05/01/20 10:53:35 ID:k4RyEyf30

何年か前のこと。岡山に住んでいる母と下関に行く用事があった。 
用事が済んで帰る前に、二人で赤間神宮に行ってみることにした。 

ところが、境内の奥の方にある平家七盛塚まで回ったところで、 
急にその場にへたりこんでしまうほど体が重くなり、涙がぽろぽろとあふれてきた。 
母を見ると、同じように地面にへたりこんでいる。 
二人で、「ど…どうしたんだろう?」「昨日食べたふぐがあqwせdrftgyふじこlp;」 
と言い合い、ふらふらしながら逃げるように神社の外に向った。 

神社を離れると私の気分は回復したが、母はまだ具合悪そうにしている。 
仕方なく、そのままタクシーを呼んで駅へ向い、新幹線に乗り込んだ。 
道中、母はずっと眠っているようだったが、もうすぐ岡山に着くという頃になって、 
ぱちりと目を開けて「あぁ、いなくなった」と言った。 
「いなくなった、って?」 
母は夢を見ていたそうだ。誰かが母の手を握って泣いているのを。 
それがさっき、急ににっこりと笑って消えていってしまったのだ、と。 
ただ、それがどんな人だったのか、不思議にまったく覚えてない、と言っていた。 

それから1年ほど経って、母の実父が亡くなった。 
母の両親は母が幼い頃に離婚していて、実父とはずっと会っていなかったのだが、 
お葬式に行って実父の思い出に浸るうちに、ふと思い出したそうだ。 
「そういえばね、おじいちゃんは平家の落人村の出身だったんだよね」 
(岡山には落人伝説の残る部落がいくつもある) 

あの時母についてきた「誰か」は、久しぶりに同族に出会って懐かしかったのだろうか。 
ふと、そんな風に思った。 

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