上顎から上の無い男

465 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :03/12/31 16:56

先輩の話。
ある山歩き大会に参加した時のこと。 
開会式の開かれたキャンプ場で、彼は嫌なものを見かけた。 
上顎から上が失くなっている男性が、参加者の間をふらふらと歩いていた。 
チェックのシャツとニッカズボンを身につけているが、明らかに生者ではなかった。 
誰も気がついていない様子で、見ていて鳥肌が立ったという。

式が終わる頃、それは先輩に気がついたらしく、じっと顔?を向けてきた。 
やがて下顎を揺らしながら、先輩の方に向けて歩き始めたそうだ。 
彼は慌てて、大会のコースを足早に歩き出した。 
しばらく先頭を歩き、小高い丘に上がって後ろを振り返った。 
なだらかな丘陵になっており、スタート地点の人間が芥子粒のように小さく見える。 
やがて参加者に混じって、よたよたとちっぽけな、しかし不気味な姿が現れた。 
もう大会などそっちのけで、即行で家に帰ったのだという。

先輩と一緒にいると、頻繁にあたりを見回す癖があることに気がつく。 
今でも彼が自分の後をついて来ていないか、怖くなることがあるそうだ。

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