ご来光

484 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/01/01 16:09

友人の話。
彼の所属する青年部では、毎年、初日の出登山というものを開催している。 
元旦の前には、山頂の小さな祠に、当日晴天に恵まれるようお参りするのだそうだ。

一度、雲が多く天気が悪い年があった。 
どうなることかとスタッフ一同心配していた。 
日の出時間間近、彼は山頂の一番高い木に、何かが止まっているのに気がついた。 
はっきりと見えなかったが、何だか山伏のようだったという。 
それは分厚い雲に向かい、一生懸命に団扇のようなものを振っていた。 
なぜか分からないが、彼も心の中で必死に応援したそうだ。

日の出寸前、雲の一部がぽっかりと口を開けた。 
皆の口から歓声が上がり、無事にご来光を拝むことができた。 
雲が切れたのは、ちょうど日の出の前後、十分くらいだけだったという。 
いつの間にか木上の影は見えなくなっていた。

彼はそれ以来、年末のお参りには欠かさず参加しているそうだ。 
今のところ、六年間無事にご来光を拝めているらしい。

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