いつの間にか血まみれ

957 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/01/18 18:11
先輩の話。
一人で山歩きしていた時のこと。 
その山はそれほど高さがなく緑豊かで、女性や子供の登山者も多かった。 
緩やかな道を歩きながら、彼はすれ違う人たちと挨拶を交わしていた。 
しかし峠を越えたあたりから、すれ違う人が皆彼を無視するようになった。 
こちらから挨拶しても露骨に目をそらすのだ。 
彼が訝しんでいると、中年の女性登山者が走りよって声高に言った。

 どうしたの、その怪我は?

その時初めて、彼は自分の掌が血まみれなのに気がついた。 
慌てて確かめると、身体中が切り裂かれたかのように傷だらけで、血を吹いていた。 
急に立ちくらみを起こし、病院に運ばれる騒動となった。

割と深い傷だったらしく、なぜか下着の下の皮膚まで傷を負っていたらしい。 
不思議なことに少しも痛むことがなく、一晩のうちにすべて完治した。 
いつの間にそんな傷ができたのか、彼にはまったく分からないということだ。

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