泥の中

694: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 04/12/05 05:31:00 ID:yANQH878

先輩の話。
彼の家近くの山に、良い蓮根が取れる沼地があるのだそうだ。 
誰が手入れしている訳でもないのに、毎年結構な収穫があるという。

奥さんと一緒に取りに行っていた時のこと。 
泥の中をまさぐっていると、誰かがぎゅっと先輩の手を握ってきた。 
小さな幼子くらいの大きさだったらしい。 
それは硬直した彼の手をしばらくニギニギしてから、すっと泥中を離れていった。

すぐさま奥さんの所へ飛んで行き、何かがいる!と訴えた。 
上がろうと言う先輩を押し止め、奥さんは平然と切り返したという。

 大丈夫よ。これまでも何もなかったし。

彼の醜態を見ていた筈の周りの奥様たちも、皆一様にしれっとした顔。 
母ちゃんは強いよなぁ。そう言って先輩は感心していた。

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