おめは死にびとか?

593 :今夜が山田:03/12/07 01:39
ひとりで山を歩いている男がいた。 
夕闇が迫り、自然と足早になる。 
木が風に揺れ、ざわざわと音をたてた。 
びゅうっと風が通り抜けた。 
男は奇妙な感覚に襲われた。 
誰かが、自分を見つめている。 
それも大勢の誰かが、息を殺して。 
急に寒けを覚えて立ち止まる。 
ふと後ろを振り返ると、女の子が立っていた。 
「おめは死にびとか?」 
女の子は不思議そうに訊く。 
逃げ出したい気持ちを抑えて首を振った。 
「こっち」 
女の子に手を引かれ、けもの道を夢中で走った。
ハッと我に帰ると、山道の入り口で 
一輪の花を持って立っていた。

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