悪寒

700: 本当にあった怖い名無し 2005/06/01(水) 01:48:47 ID:Yp0G2MzK0
舞台が舞台だけにここに書き込んでいいものか悩んだんですが、 
そっち系のスレもなさそうだし、まぁ、いいかな、と。 
先に謝っときます。スレ違い気味ですみません。
 小学生のとき、日高の自然の家が夏休みに10日(実質一週間ほど) 
かけて150km歩き通すという企画をやってた。うちは親父が体育会系 
なもんで否も応もなしに参加決定され、炎天下を足引きずりながら 
歩く羽目になった。

 その日は数年前に廃校になった小学校に泊まることになっていた。 
相変わらずの太陽の下、左右に畑や放牧地を見ながら延々と丘陵地を 
歩き続け、目的の学校に着いたのは15時を過ぎた頃だったと記憶して 
る。荷物を置くとそれまでの疲れも忘れ、俺達は校内の探検を始めた。

 木造校舎が珍しく、あちこち覗いているうちに、少し低くなった 
場所にある体育館を発見した。扉は閉ざされていたが施錠はされて 
おらず、簡単に開く。誰からともなしに「入ろうか」と言い出し、 
そっと俺達は中に足を踏み入れた。

 体育館の中は、外の暑さが嘘のように冷えていた。周囲の木立で 
うるさく鳴いているはずの蝉の声さえ聞こえない。最初は恐る恐る 
歩き回っていたが、次第にその雰囲気にも慣れ、走り回ったり床に 
寝転がったりしているうちに、ふと、ステージ脇の用具入れの扉が 
目に留まった。木製の簡素なもので、簡単に開きそうだった。皆を 
呼び集め、いざ開けようと手を伸ばしたその時。
―――ぞくり。 
 背骨に氷柱を突っ込まれたような悪寒を感じた。思わず手が止まる。 
そして、扉は『ギィ~~~』と軋みながらゆっくりとこっちに向けて 
開き始めた。 
 一斉に悲鳴をあげながら逃げ出す俺達。陽の差し込む窓のところまで 
走り、興奮した口調で話す。 
「ビビったぁ~。何か、いきなり寒気がして、そしたらアレだもん」 
「え?お前も…?」 
「あ、それあたしも…」 
 その場にいた全員が、扉が開く直前、背筋が凍るような悪寒を覚えた 
そうだ。その後体育館に行った別のグループの話では特に異常はなく、 
ステージ脇の扉も閉まったままだったらしい。 
 結局、次の朝そこを発つまで、体育館は二度と覗かなかった。
 

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