小道

243: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2005/06/22(水) 18:56:22 ID:9DsbDFBM0
友人の話。
彼女の実家は小さい山を持っている。 
その麓に“入ってはいけない”と、家族から言い聞かせられていた小道があった。 
なぜ入るのが駄目なのかは、教えられていなかったという。

幼い頃、その山で遊んでいた時のこと。 
きつく注意されていたので、件の小道には近寄らないようにしていた。 
と、いきなり「おいっ!」と声がして、肩をグイとつかまれ引っ張られた。 
驚いて顔を上げると、お祖父さんが怖い顔をしている。 
その時初めて、自分がその小道の入り口付近に居ることに気がついた。 
なぜそこに近付いてしまったのか、全然覚えていない。

祖父曰く、黒い影が、彼女の手を引いて小道に入ろうとしていたのだと。 
影はぼんやりとしていて、彼女と同じくらいの背丈だった。 
人型をしていて、まるで真っ黒い子供を連想したそうだ。

それから間もなく、小道を囲むように鉄条網で柵が設けられた。 
彼女の祖父さんと父親とで拵えたらしい。 
以来、そこら一帯の原は寄る者も居らず、放っておかれるままだという。

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