修行場

467: 本当にあった怖い名無し 2005/06/27(月) 14:01:15 ID:EVK3TdIGo
奥多摩の自然観察保護員(?)の写真家が、日原川の奥に 
釣りに行った時の話。
深夜に着いて、林道の奥に四駆車を停めて朝を待つことにした。 
早朝から釣りを始めるつもりだったが、何故かいつものように 
寝着けない。 
暫く眠気を催した深夜、車の近くを誰かが歩いている音がした。

〝ザク、ザク、ザク…〟

昵っと聞耳を立てていたが、不審な足音は車の周りをずっと 
歩き回り続けているようだった。 
写真家は奥多摩に生息する動植物の写真を撮っていたので、 
ある程度生き物に触れる機会は多い。 

「鹿かも知れない。しかし、道に迷った登山者だったら…」 
妙な寒気も感じ、写真家は寝るどころではない。 
それから長い間、足音は車の周囲に積もった秋の落ち葉を 
踏み鳴らしていたが、急に足音が止んだ。 
「あれ…?」 
益々訝しく思った写真家は、暫く迷った末、とうとう車外に 
出て確認する事にした。 
ドアを開けると山の冷気が鼻孔を突く。 
車の周りは漆黒の闇。 
「何だ誰も居ないじゃないか…」 
念のため足元を確認したが、野生動物の足跡らしき物はない。 
おかしいな、確かに誰か歩いていたのに…。

日原の奥では、今も姿の無い足音を聞く釣り人がいるらしい。

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